林田力

林田力の不動産書評

『これからのシェアハウスビジネス』

三浦展、日本シェアハウス協会『これからのシェアハウスビジネス』(住宅新報社、2014年)はシェアハウス事業を紹介する書籍である。本書は冒頭で、これからはシェアハウスの時代と述べる(1頁)。私は江東区議会に空き家をシェアハウスなどに有効活用することを求める陳情を提出しており(若者の自立支援政策を目的とした区内の空き家の実態調査とそれに基づく施策策定を求める陳情)、本書のスタンスに共感する。

既にシェアハウスの利点は認識しているつもりであったが、本書から学ばされたこともある。たとえばキッチンもシェアハウスのメリットである(25頁)。ワンルームマンションのキッチンは貧弱であるが、シェアハウスのキッチンならば住宅サイズで設備も機能も充実している。シェアハウスは住環境だけでなく、食生活も改善する。

本書は他にもワンルームマンションと比べたシェアハウスの優位性を指摘する。シェアハウスはワンルームマンションと比べれば、厨房や洗面所、風呂、玄関ドアや水道、ガス、電気の検診メーターの数を減らすことができる(32頁)。これは工事費や維持費を減少させることができる。これはシェアハウスの経済低優位性を示すものであるが、むしろワンルームマンションが資源の無駄遣いと感じた。

シェアハウスは夢のある話であるが、残念ながらブラックな問題もある。貧困ビジネスがシェアハウスを悪用した脱法ハウスを展開して社会問題になった。本書は貧困ビジネスの問題にも触れている。

シェアハウスは脱法ハウスとは異なるものとし、脱法ハウスは問題とする。「近い将来さらなる「脱法ハウス」が登場しかねない状況を考え、現実社会に即した、より細かい指導基準を作ることが必要です」とも言っている(104頁)。反貧困に取り組む人々の中にも脱法ハウスを必要悪と見がちな傾向がある中で本書のスタンスは明快である。

『不動産格差』

長嶋修『不動産格差』(日本経済新聞出版社、2017年)は不動産コンサルタントによる書籍である。本書の主張はタイトルの通り、不動産の価値に格差が生まれるということである。具体的には「価値維持あるいは上昇する」「徐々に価値を下げ続ける」「無価値あるいはマイナス価値に向かう」の三極化するという。

人口減少、持ち家信仰の希薄化、空き家の増加など不動産の価値が下がることは容易に理解できる。一方で供給過剰であるにもかかわらず、一部の不動産の価値が上昇することは理解しにくい。不動産の価値が下がるばかりでは消費者の不動産への関心が弱まり、不動産業界に関係する立場として不都合があるためではないかと邪推したくなる。

ここに違和感を抱く理由は本書が不動産の価値を交換価値と見ている点にある。受託に住み続ける人にとって交換価値は、それほど重要ではない。たとえばスマホを考える。新品のスマホと二年間使用続けた中古のスマホでは前者の方が交換価値は高い。

しかし、買ったばかりの新品のスマホと二年間使用続けた中古のスマホのどちらを紛失した場合が持ち主に痛手かと言えば後者である。経済的な価値では前者であっても、後者には様々な設定や情報が含まれている。それを失うことは経済的な価値では回復できない。不動産の価値も、そのような面が大きいのではないか。

それは別として、戦後の不動産神話に対する批判は大いに参考になる。タイル張りのマンションでは雑な施工でタイルが剥がれ落ちる危険がある(135頁)。これは私の購入した新築分譲マンションでもシール材(シーリング材)が石部に浸透して黒い影が出たという問題が起きた。

本書はアフターサービスの有効活用を主張するが(130頁)、デベロッパーは「売ったら売りっぱなし」で誤魔化そうとする。私の経験ではマンション管理会社を分譲デベロッパーの子会社から独立系管理会社に変更することで、ようやく対応された。

マンション管理の分野では業者へのバックマージンが横行しているという(138頁)。これも不動産業界の後進性を示すものである。私の経験でもリプレース前のマンション管理会社は管理人をリフォームの営業に利用していた。

他にも「木造住宅が地震に弱い」が誤解であること(147頁)や9割のマンションでは建て替えができないこと(126頁)、悪質リフォームが横行していること(197頁)など不動産分野の様々な問題を取り上げている。

書評『図解 ひと目でわかる地方消滅』

別冊宝島2299『図解 ひと目でわかる地方消滅』は人口が減少する日本の未来をまとめた書籍である。「日本の人口減少」を軸に地方の現状と未来を、地図、表、グラフ、図版を中心にヴィジュアル面を重視して解説する。

本書は空き家問題も取り上げている。「特に問題となるのは、空き家になったにも関わらず、買い手や借り手を募集しているわけではなく、そのまま置かれている状態の『その他』の空き家である」(米山秀隆「7軒に1軒は空き家」48頁)。

江東区は、その他の空き家の割合が多い(林田力『何故、空き家活用か』「江東区の状況」)。これが希望のまち東京in東部が江東区議会に「若者の自立支援政策を目的とした区内の空き家の実態調査とそれに基づく施策策定を求める陳情」(26陳情第23号)を提出した背景である。

本書の巻頭は猪瀬直樹前東京都知事のインタビューである(「人口減少時代の「成長戦略」論」)。江戸時代後半も人口減少社会であったとし、人口減少を嫌悪するのではなく、人口減少社会の中で持続可能な社会を志向する。そのために「既得権益の利益の分配のためにあった規制を変えて、既得権益のない人たちでも新しいビジネスを立ち上げやすい環境にしていかなければいけない」と主張する(13頁)。この論理構成は巧みである。現代日本で猪瀬氏が撤廃を求める規制の個々については議論があるだろうが、頭ごなしに規制緩和反対を叫ぶだけでは、既得権擁護者に過ぎなくなる。

本書には赤木智弘氏の小説「2040年、70歳「現役」フリーター」もある。赤木氏は格差社会の犠牲者の心理を率直に表明した論文「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。」の著者である。

最近ではTwitterで放射脳カルトを皮肉っている。「「岩上安身が狭心症で倒れたのは放射能のせい」と騒ぐ人がさっぱりいないのは、さすがに放射脳な人たちも本気で心配しているからだろう。ということは、これまで「放射能のせい!」と言っていた有名人などの死は、放射脳にとっては利用するためのネタに過ぎなかったということでもある」

小説では高齢者ばかりとなり、衰退した未来の日本を描く。貧困層を排除したゲーテッドコミュニティーも、中間層の没落によってスラム化したとの説明にはリアリティーを感じた(79頁)。現在の新築分譲マンションなども、そのようになりそうである。

一方で小説の主人公である70歳現役フリーターの生活が本人が言うほど悲惨なものには感じられない。確かに主観的には惨めな生活であるが、衣食住は何とか足りている。ブラック企業や貧困ビジネス(ゼロゼロ物件・脱法ハウス)、危険ドラッグ売人などの現代の社会悪に直面している人々からすれば落ち着いた生活である。

「社会は荒れ果て、無差別殺人や自殺を前提とした自爆テロが当たり前となった」という記述がある(79頁)。その中で惨めでも変わらない毎日を送れるような安定を維持できるだろうか。衣食住さえ大変という実態が見えてこない。

「「『丸山眞男』をひっぱたきたい」には反体制を気取りながら、自分達は世代間格差の受益者になっている左翼シニア世代への真っ直ぐな怒りがあった。左翼シニア世代が鬼籍に入った未来では怒りの明確な向け先がなくなり、ただただ罵倒しているだけになってしまった感がある。ブラック企業や貧困ビジネス、危険ドラッグ売人などが存在する限り、「目の前にある、ほんの僅かな幸福感」(80頁)さえ維持できないように思われる。

『“悪夢の超特急”リニア中央新幹線』

樫田秀樹『“悪夢の超特急”リニア中央新幹線』(旬報社、2014年)はリニアモーターカー建設計画の問題を取り上げた書籍である。住民無視の開発という点では外環道や東急不動産のブランズシティ久が原、FJネクストのガーラ・グランディ木場と同じである。住民説明会での住民と向き合わない不誠実な対応も共通する。

リニアモーターカーは鉄道としては異質である。トンネルの中を飛ぶ弾丸というイメージに近い。エアバス社が空飛ぶ自動運転車の開発に着手した中で開発の方向性がずれている。

リニアモーターカーは経済的にも成り立ちそうにない。そのような事業が進められてしまう一因として国鉄民営化の歪な地域割があると感じた。考えてみればJR中部ではなく、JR東海であることは不思議である。

JR東海は中部地方の鉄道会社というよりも、東海道新幹線のための鉄道会社である。東海道新幹線の乗客の大半は地域住民ではなく、東京と大阪の移動者である。地域密着ではなく、地域の方を向かない鉄道会社になってしまう。そのような企業だからリニアモーターカーのような計画が出てくるのではないか。

環境問題解決への科学者の役割

古今書院『地理』2017年1月号は「環境問題解決への科学者の役割」を特集する。科学者はどうあるべきかという固めの文章である。

この種の特集テーマでは科学者として非科学者に正しい科学的知識を伝えるという啓蒙的な発想が出てくることが予想される。実際、本書にも「科学知を生活知のレベルに普及し、『国民的な森林リテラシーの向上』を目指すことが求められる」との指摘がある(蔵治光一郎他「森林環境問題の解決における科学者の役割」45頁)。

しかし、本書はそれだけではない。科学者の限界を弁えている記事も多い。たとえば以下の指摘がある。「自然科学によって環境問題を認識し、その背景にある因果を解明したからといって、問題が解決するとは限らない。また、自然科学の一元的価値を押し付けただけでは住民の意識や行動の変革は望めない」(奥田昇他「超学際科学に基づく順応的流域ガバナンス」39頁)。

「森林環境問題の解決における科学者の役割」でも一方的に科学者の論理を押し付けるだけではない。「問題解決に貢献する科学者に求められる『作法』とは、自ら問題の現場に出て、市民の生活知、行政の政策知、森林所有者、業者、組合の知に謙虚に耳を傾け、彼らに信頼される科学者を目指すこと」と指摘する(45頁)。

科学者が科学的知見を唯一絶対の真実というような独善に陥っていないことは希望が持てる。その上で問題が残る。科学者が住民と行政、企業など外部の知に謙虚に耳を傾けることは大切であるが、公害問題や開発問題では住民と行政、企業が真っ向から対立することがある。どちらの知に耳を傾けるのかが問われる。

これまで科学者は経済発展や事業継続という行政や企業の論理を忖度し、住民の被害を過小に評価していたと感じられる。実際、本書にも「日本の公害の歴史を振り返ると、それは犠牲の歴史でもあった」との指摘がある(近藤昭彦「環境問題の現場における科学者とステークホルダーの協働」13頁)。

科学絶対主義の独善に陥らず、外部の知に謙虚に耳を傾けなければならないという命題は正しいが、それが行政や企業の結論を追認することを正当化していないか。難しいところは行政や企業は科学者の研究費の出し元になる点がある。しかし、科学者も市民であり、どこかの住民である。その感覚が非常に大切であると考える。

『再開発は誰のためか』

岩見良太郎『再開発は誰のためか 住民不在の都市再生』は再開発の問題を明らかにした書籍である。著者は埼玉大学名誉教授である。再開発は不動産業者やゼネコンの金儲けのためにあることを明らかにしている。しかも、その金儲けは住民の犠牲の上に成り立っている。

問題は不動産業者の金儲けが公正な市場競争で得られたものではないことである。再開発には補助金という形で税金が出される。補助金がなければ再開発は事業として成り立たないとまで指摘している。

さらに再開発ではルールが開発業者が儲けやすいように変更される。まさに再開発は業者の金儲けのためにある。これは自力で商業施設などを運営する健全な業者を競争上不利にするため、市場を歪める。このような不公正なことが許される理由は再開発に公共性があるという建前のためである。

これに対抗するために本書は住民本位の公共性「まちづくり公共性」を志向する(130頁)。これは議論として筋が通っている。一方で、それが現実的な解決策になるかというと一抹の不安がある。日本は明治以来、企業の発展が社会の発展という考え方できている(後藤道夫『ワーキングプア原論──大転換と若者』花伝社、2011年、58頁)。それは戦後になって、むしろ一層強まった。故に企業を儲けさせることが公共に資するという考え方は根強い。住民個々の権利を尊重し、安易な公共性主張を許さない方向も一案ではないか。

地図学習を見直そう

古今書院『地理』2016年11月号は「地図学習を見直そう」を特集する。ここで取り上げられた地図学習は一方的な講義ではない。学習者が主体的に地図を読み取る活動である。私の学生時代の地理は教科書や資料集を読み、知識を入れるというイメージであった。それは私にとっては楽しいものであったが、暗記物と嫌う人も少なくなかった。本書は地理が無味乾燥な暗記物ではないことを教えてくれる。

本書にはドローンによる地形の撮影の記事もある(田中圭「低空撮で使える工夫、様々なドローン」)。ドローンと言えばマルチコプターが有名であるが、記事では固定翼機や水中ドローンも紹介する。将来は学校教育でドローンを使った地形の撮影を行うことがあるかもしれない。学校教育が楽しくなる。

危険性が指摘され、沖縄県では激しい配備反対運動が起きているオスプレイと同じ垂直離着陸機(VTOL)のドローンもある。回転翼から固定翼への「切り替え時は機体のバランスを崩しやすい欠点があり、操縦は簡単ではありません」という(71頁)。この点は未亡人製造機と呼ばれるオスプレイと重なる。

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