葛飾区の空き家問題

林田力

葛飾区は空き家率11.8%である。東京都11.1%、特別区11.5%をやや上回る。空き家の内訳は二次的住宅1.6%、賃貸用住宅64.9%、売却用住宅5.8%、その他の住宅27.7%である。東京都の内訳は二次的住宅2.2%、賃貸用住宅65.5%、売却用住宅7.1%、その他の住宅25.1%である。特別区の内訳は二次的住宅2.1%、賃貸用住宅65.1%、売却用住宅7.2%、その他の住宅25.6%である。葛飾区は東京都や特別区と大きく変わらないが、その他の住宅の割合がやや高い。使い道のない空き家の割合が高いということで、空き家対策の必要性を示している。

葛飾区議会では2012年(平成24年)12月17日に「空き家問題の解消に向けた対策に関する意見書」を衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、国土交通大臣、環境大臣、防災担当大臣宛てに提出している。そこでは危険空き家対策が中心であるが、空き家の再利用促進にも言及している。この意見書は平成24年第4回定例会に議員提出議案第33号として提出され、全会一致で可決された。

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総務省が実施している住宅・土地統計調査によると、総住宅数は、昭和43年に総世帯数を上回り、その後も総世帯数の増加を上回る勢いで増え続けている。

これに伴い空き家も、一貫して増加を続け、平成20年の調査時においては757万戸となり、総住宅数に占める空き家の割合は13.1%と、ほぼ7戸に1戸が空き家となっている。今後、少子化により、我が国の人口が減少を続けることで、世帯数も減少に転じることが予測されており、空き家の増加はさらに加速することが見込まれる。

一方、空き家におけるゴミの不法投棄や火災・台風による空き家の損壊等が各地で発生しており、空き家の存在が衛生及び防犯・防災上の観点から大きな問題になっている。特に人が長期間居住していない空き家は、老朽化の進行が著しく、首都直下地震などの発生時に、倒壊によって避難路を閉塞するなど人的被害を拡大させる恐れすらある。

現在、建築基準法や消防法において、著しく危険な物件については、所有者、管理者等に除却・その他の措置を命ずることが可能であり、履行されない場合は行政代執行法に基づく措置をとることができると規定されている。しかし、「著しく危険」の範囲が不明瞭であるうえに、代執行までの手続きが具体的に定められておらず、増加し続ける空き家の対策として実効性のあるものにはなっていないのが実情である。

よって、本区議会は国会及び政府に対し、老朽化して危険な空き家の除却及び活用可能な空き家の再利用を促進するため、財政等を含めた支援により、所有者・取得者及び地方公共団体の費用負担の軽減を図るとともに、関連法令の改正等により、所有者に対する適正管理の義務づけや地方公共団体による指導等の権限の強化を図るなど、総合的な施策体系を確立するよう強く求めるものである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

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うてな英明議員(民主党)は平成24年第2回定例会において、空き家等の適正管理について「さまざまな角度から葛飾区でも対策を検討していく必要がある」と質問した。平成25年第1回定例会の一般質問で、空き家活用について大学生がシェアハウスとして活用するなど、外部から人口を流入させるという観点から検討を求めた。



葛飾区議会・平成26年第1回定例会では、議員提出議案第3号「葛飾区空き家等の適正管理に関する条例」が上程されたが、否決された。条例案は日本共産党区議団が提出し、建設環境委員会(3月12日)で審議された。

提出代表者・三小田准一議員(日本共産党)は条例案を「ふえ続ける空き家に対して危険な老朽家屋の撤去支援、危険性が高いと判断された場合の対応を定めた」と説明する。これに対して建築課長は条例制定の前に実態調査をしたいと答弁した。

「区では、老朽建築物に対応するための条例を制定するためには、まず、区内の建築物の実態を調査する必要があると考えているところでございます。そのために、平成26年度は区内で登記されている全ての建築物について登記簿を調査することや、自治町会長の方々から、日ごろ地域で問題になっている老朽建築物の情報提供をお願いすることも検討しております。こうした情報から老朽化の可能性がある建築物を抽出いたしまして、現地調査を実施したいと考えているところでございます」

建設環境委員会における賛否は以下の通りで否決が多数であった。

平田みつよし委員(自由民主党)「詳細な実態についてまだ検証の余地があると思われます。条例化には、なお調査・検討を要すると思いますので、今回は否決を主張させていただきます」

上村やす子委員(公明党)「まず、窓口の一本化等も含めて、調査・研究した上で実施を図るべきだと思っております。現段階では、時期尚早と考え、本条例については否決をいたします」

おりかさ明実委員(日本共産党)「皆さんも空き家対策は必要だというふうにおっしゃっているわけですから、条例をつくって、そういう対策を進めることで空き家の除却など、解消が進んでいくということを期待します。条例賛成です」

清水忠委員(政策葛飾)「空き家等の適正管理ということで、何をもって危険な状態なのかというのは、ちょっとこれ定義を見ていても、なかなか限定された中で考えるというのは、非常に難しい部分があると思うし、なおかつ、本来、建物については建築基準法等のちゃんと法令があるわけですから、そういった適正指導をすることによって、なおかつ、地域的に不燃化だとか、そういった中で、葛飾区は、今、まちづくりを進めていますので、そうした中で対応すべきだというふうに私は考えておりますので、この議員提出議案については、否決を主張します」

小林ひとし委員(無所属)「私自身もこの空き家対策、必要性というのは実感をしておりますけれども、しかしながら、やはり実際に実行に移していく、そういった行政代執行であったり、それにかわるものを用意するということがやはり私は必要だと思っております。そういった意味で、区のほうも条例化に向けてという話もございましたので、今回は、そういった意味で、私も否決を主張させていただきます」



平成26年第1回定例会では、おりかさ明実議員(日本共産党)が空き家活用策を提言した。また、天野ゆうや議員(日本共産党)も予算案に対する反対討論において、災害対策強化の文脈で「毎年ふえ続けている空き家対策の強化を求めます」と主張した。

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 1、空き家・空き室対策として所有者の相談窓口を設置すること。

 2、撤去後の跡地の有効活用として、公園、広場などに転換すること。

 3、若者の定住促進のためにシェアハウスに改修すること。例えば4LDKで家賃16万円での家を4人でシェアすれば、1人4万円、区が家賃補助をすれば、さらに低家賃になります。もちろん居室の最低面積、採光など、独自のガイドラインも必要になってくることは言うまでもありません。また、集合住宅の空き室を借り上げ、家賃助成を行うこともできます。大学生であれば、親の経済的負担も軽減できます。こうした若者向けの具体策は、社会問題になっている脱法ハウスを事実上規制することにもつながります。

 4、ひとり親世帯のために、一軒家や寮、集合住宅を改修し、共用部分を子育てなどの交流スペースにすること。民間事業者が渋谷区の旧教員住宅を改装して、子育て支援をコンセプトにしたシェアハウスを3月にオープンすることが、新聞でも報じられています。

 5、高齢者の住宅を確保する集合住宅の空き家の借り上げや、一軒家をグループホームにすること。昨年12月20日に出された社会保障審議会介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」の中にも、高齢者の住宅として、「低廉な家賃の住まいの場として、全国で増加傾向にある空き家等の既存資源を有効に活用する必要がある」と指摘しているところです。また、名古屋市では、市営住宅の一室を単身高齢者でシェア居住するモデル事業を実施しています。課題もあるようですが、高齢者の孤立死防止の対策としての試みとして参考になるのではないでしょうか。

 6、地域の居場所づくりや福祉利用に転換すること。子育て真っ最中の方々が気軽に集まり、情報交換などができる子育てサロンまたは高齢者のサロン、地域の方々の作品を展示するギャラリー、デイサービスの福祉利用などが考えられます。空き家の増加をプラスにとらえ、セーフティネット住宅を構築していくためにも、空き家対策として区独自の住宅リフォームや改修、改築助成を創設してはいかがでしょうか。

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これに対して裄V永一都市整備部長は「利活用が可能な建築物につきましては、区民相談の窓口や不動産業者などの専門家のアドバイスを受けられることをお勧めしているところでございます」と答弁した。



平成26年第2回定例会では上原ゆみえ議員(公明党)が空き家問題を質問した。「空き家の利活用、また、危険な特定空き家の対策をするに当たり、住宅問題を扱う体制を整備する必要があると思います。区として、住宅対策総合窓口を設置するなど、強固に進めるべきと考えます」

青木克コ区長「この法案(空き家等対策の推進に関する特別措置法案)だけでは十分対応できない事柄や本区の特性を踏まえた本区独自の対応を進めるため、条例を制定することを検討してまいりたいと考えております」

杉本一富都市施設担当部長「所有者と借り手側のマッチングにつきましては、本区の空き家の状況を把握する中で、その特性の検証と、これを踏まえた上での老朽化予防策や利活用策を検討するとともに、除去後の跡地の活用等を含め、総合的な視点から対応してまいりたいと考えております」

裄V永一都市整備部長は「空き家の現状把握のための実態調査の必要性」について以下のように答弁した。「管理不全の空き家や老朽家屋について対策を講ずる上で、指導の対象となる建物の棟数や状況の把握、所有者の情報などの把握は重要なことだと考えております。

そこで、現在、区で作成を進めている10万棟余りの民間建築物の登記情報を活用することを検討しております。この情報から、築年数の古い建物や所有者が居住していない建物を抽出し、空き家や管理不全な状態になっている可能性がある建物を調査する資料としたいと考えております。

こうして抽出した建物について、空き家や老朽の実態を把握するために、自治町会など区民の方々からの情報提供をお願いしたり、必要に応じて職員や調査機関による現地調査を実施することも検討してまいりたいと考えております。その上で、この調査結果をもとに、劣悪な管理不全な建物所有者に対して適切な管理を実施するよう、指導してまいりたいと考えているところでございます」


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