悪徳不動産業者が空き家問題を悪用
林田力
空き家問題への社会的関心が高まっているが、悪徳不動産業者の飯の種にもなっている。東京都渋谷区の不動産業者が都内の空き家所有者に対し、火事や倒壊で近隣に被害が出た際の責任に言及した上、対応しない場合は「しかるべき対処をさせて頂きます」として連絡を求めるDMを多数送付した。建物所有者からの相談を受けた練馬区は「文面が行き過ぎており、悪質な商法」として業者を口頭で注意した。練馬区によると、不審なDMに関する相談は2015年3月16日までに12件あった。はがきには受け取った人が所有する空き家などの地番が記され、「近隣の方々より苦情が出ております」と指摘。「倒壊の可能性が非常に高く、火事における被害も甚大」として「近隣に被害が出た場合は、建物の持ち主が全ての責任を負います」と続き、「内容を確認しましたら、必ず弊社までご連絡下さい」と求めている。
この業者は宅地建物取引業の都知事免許を持っており、建物所有者が業者に電話で連絡したところ、「区とタイアップしている」などと説明され、行政との連携事業であることをうかがわせたという。しかし、練馬区の担当者は「公共機関は関与していない。真意は不明だが、登記簿を基に所有者を調べ、不動産売買につなげようとしたのではないか。はがきを受け取っても連絡しないように」と注意を呼び掛けている(「<空き家問題>所有者に大量DM 文面行き過ぎ、練馬区注意」毎日新聞2015年3月17日)。
社会問題になっている空き家問題を利用した悪徳商法である。悪徳不動産業者への怒りと苛立ちが押し寄せる。マンションだまし売りの東急リバブル東急不動産や貧困ビジネスのゼロゼロ物件と同じである。
希望のまち東京in東部では空き家活用を江東区や足立区に働きかけている。このような悪徳商法がのさばると空き家活用の取り組み自体が批判されかねない。シェアハウスが貧困ビジネスによって脱法ハウスとして悪用され、シェアハウスそのもののイメージを悪化させた。悪徳商法と同視されないように悪徳不動産業者を批判することも社会運動の大切な使命である。
