林田力『東急不動産だまし売り裁判』研究



男になれなかった市川海老蔵


歌舞伎役者の市川海老蔵が2010年12月28日に東京都内のホテルで会見を開き、東京地検に傷害罪で起訴された伊藤リオン被告との間に示談が成立したことを説明した。暴走族などの反社会的勢力と徹底的に戦うと見られていた中での示談成立は海老蔵のイメージダウンになった。

記者会見では海老蔵は自身の酒癖の悪さが原因と反省した。確かに海老蔵には反省すべき点が多い。そもそも元暴走族のような人物と一緒に酒を飲むこと自体が問題であった。しかし、それで左上顎骨粉砕陥没骨折や視覚障害などの重傷を負うことを甘受しなければならない理由にはない。血まみれとなり、殺されていたかもしれない事件である。

そして落ち度があるという相手の罪悪感につけ込み、不当な要求を押し通すことは反社会的勢力の常套手段である。海老蔵の酒癖よりも、六本木に巣食う反社会的勢力の無法の方が大きな問題である。だからこそ民事介入暴力の専門家・深澤直之弁護士(右田・深澤法律事務所)を代理人とした意味がある。父親の市川團十郎も21日に「一切しておりません」と示談交渉を明確に否定していた。その直後に前言と矛盾する示談成立は成田屋への信用を失墜させる。

実際、ネットでは示談成立に対して海老蔵が屈服したとの見方が圧倒的である。金銭の授受はないというが、実際は海老蔵側が元暴走族に支払ったのではないかとの推測がなされている。少なくとも海老蔵は東京地検に公判請求を望まないことを上申するとしており、殴られ損である。

海老蔵が示談に応じた要因として、海老蔵が元暴走族リーダーT・Iに暴行した可能性がある。海老蔵は会見で「私は暴力をふるった記憶がございません。しかし客観的に証明できない。」と説明した。しかし、元暴走族の主張は変遷している。「ステンレス製の灰皿で殴られた」から「頭がぶつかった」「乱暴な介抱を受けた」にトーンダウンした。そもそも示談要求に屈するような海老蔵が、元暴走族の集団に囲まれた状況で、そのリーダーを殴ったという状況は現実味に欠ける。

むしろ、マスメディアの報道姿勢が成田屋を示談に追い込む無言の圧力になった。海老蔵は裸で土下座する写真を撮影され、携帯電話など所持品を奪われたと報道された。そして土下座写真の流出や、携帯電話に記録されている情報が悪用される可能性も報道された。このような卑劣な行為は、典型的な反社会的勢力の脅しの手口である。しかし、マスメディアの報道には卑劣な脅しに対する弾劾的な論調は見られなかった。反対に海老蔵の不幸を密の味とする報道姿勢であった。

また、海老蔵がタクシー代を値切ったという報道も悪意に満ちたものであった。海老蔵は上着も所持品も全てを失った上、ステテコ姿で逃走したとされる。この状態では財布も持っておらず、海老蔵はタクシー代を払いたくても払えない状況であったと考える方が自然である。

これに対して、伊藤リオン容疑者には不自然な持ち上げ報道がなされた。伊藤容疑者に息子を殺害された父親に「芯から悪い人間じゃないと思いますよ」とまで語らせた(「リオン容疑者らに息子殺された父「リオンは筋の通ったワル」」女性セブン2011年1月6・13日号)。伊藤容疑者は他の襲撃犯と異なり、500万円の損害賠償を支払ったとされるが、数百万円を支払った程度で評価されたならば殺された息子も浮かばれないだろう。

さらに関東連合系の暴走族出身の金崎浩之弁護士(弁護士法人アヴァンセ)を識者として登場させ、「被害届を取り下げた方が双方にメリットがあるが、海老蔵側が意固地になっている」とコメントさせた(林田力「市川海老蔵暴行事件は反社会的勢力との戦い(下)」PJニュース2010年12月17日)。

これらの海老蔵に厳しく暴走族側に甘い報道姿勢が、示談に持ち込ませようとする勢力に加担する結果となった。

反社会的勢力にとって示談は大きな収穫である。叩きのめされても、泣き寝入りするしかないという現実を見せ付けた。恐ろしいイメージを世間に浸透できただけでも組織にとって勲章である。反社会的勢力の被害者になる可能性のある一般の人々のためにも海老蔵は徹底的に戦うべきであった。

歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』の名台詞に「天河屋の義平は男でござる」というものがある。天河屋義平は討ち入りの武器調達役であったが、捕り手に怪しまれて脅迫される。それでも口を割らず、上記の啖呵を切って、赤穂義士の秘密を守り通した。これが歌舞伎の語源となった「かぶき者」の心意気である。

海老蔵が徹底的に反社会的勢力と戦えば、身をもって「かぶき者」の心意気を示すことになった。この事件を基に新たな歌舞伎作品が生まれたかもしれない。海老蔵の酒癖が悪く、言動に問題があったことは周知のことであり、いまさら取り繕うことは不可能である。海老蔵にとって最後の拠り所が反社会的勢力との戦いである。それを捨てたことで成田屋が失ったものは大きい。

男になれなかった市川海老蔵と対照的に妻の小林麻央の対応は常識的であった。事件が発覚し、六本木に巣食う反社会的勢力の存在が明らかになった発端は、麻央が血だらけで帰宅した海老蔵に驚いて110番通報したことである。海老蔵は麻央の通報で大きく救われている。

マスメディアは通報した麻央もバッシングした。麻央の通報によって事件は公になり、海老蔵は興行の無期限謹慎やコマーシャル打ち切りなど大打撃を受けたためである。麻央は梨園の常識を知らないとまで叩かれた。

しかし、海老蔵は手術が必要なほどの大怪我であり、どちらにしても興行に支障がでる。何事もなかったことにすることは不可能である。海老蔵は2007年に風呂場で転倒し、大阪松竹座「七月大歌舞伎」を降板したことがある。世間の常識とは別に梨園の常識というものがあるならば、この時も何かあったのではないかと勘繰りたくなる。

海老蔵自身は命からがら逃げ回りながらも、警察に駆け込むことはなかった。しかし、これは麻央の通報が差し出口ということにはならない。追われている当人は警察に駆け込むという発想自体が中々出てこないものである。本人ができないことを代わりに行うことは配偶者の立派な役割である。

また、泥酔した本人が通報するよりも、冷静な麻央が通報した方が警察も的確に対応できる。マスメディアからはバッシングされているものの、警察の扱いでは海老蔵は被害者である。ここには麻央の迅速な通報の影響もあるだろう。

より重要な点は成田屋としては公にしたくないと考えたとしても、それを相手が許すかは別問題であるということである。元暴走族リーダーは海老蔵に負傷させられた被害者であると主張している。もし海老蔵側が通報しなかったならば、酒癖の悪い海老蔵が暴力を振るった一方的な加害者というイメージが作られた危険もある。

その結果、同じ六本木での暴行事件で引退に追い込まれた大相撲の朝青龍と同じような運命を辿りかねない。朝青龍事件ではマネージャーを被害者に仕立て上げるなど朝青龍側の隠蔽工作が致命傷になった。これに対して海老蔵事件は大々的に注目されたからこそ、元暴走族側の攻撃も、弁護士を代理人とし、記者会見や被害届提出で揺さぶるという表舞台のものになった。

しかし、反社会的勢力にとって表舞台の戦いはアウェーである。インターネットでは元暴走族リーダーの本名や過去の素行が明らかにされ、記者会見など表舞台に出たならば大々的に告発しようと待ち構えている状況であった。それもあって記者会見はヤルヤル詐欺、被害届は出す出す詐欺に終わった。海老蔵側は有利な戦いができる立ち位置にいたが、それを可能にした出発点が麻央の迅速な通報であった。

麻央は救急車を呼ぼうとしたが、気が動転して119番ではなく、110番通報してしまったとされる。これは梨園の妻としての自覚に欠けるとバッシングされる理由になった。しかし、めったなことでは警察に通報しないというような「常識」が梨園にあるならば、「警察に通報することが当然」との正論で戦うよりも、間違って110番したと言い訳する方が梨園の風当たりは弱くなる。

決して自らの功績を誇らず、夫と一緒に批判される。意外にも麻央は梨園の妻の役割を立派に果たしていた。しかし、徹底抗戦と見られていた成田屋も最後は示談で妥協した。唯一常識的な対応をした麻央への風当たりが強くならないか懸念される。


林田力

林田力は『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社、2009年)の著者であり、東急不動産消費者契約法違反訴訟原告である。東京都中野区生まれ。

Hayashida Riki is the author of "The Suit TOKYU Land Corporation's Fraud: How to Win" and the plaintiff Who Fought Against TOKYU Land Corporation.

林田力は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実を隠して東京都内の新築分譲マンションをだまし売りされた。東急リバブル・東急不動産は新築マンション引き渡し後に隣地が建て替えられて、日照・眺望・通風がなくなることを知っていたにもかかわらず故意に告げなかった。隣地が建て替えられれば部屋は真っ暗になり、作業所になるため騒音も発生する(山岡俊介「東急不動産側が、マンション購入者に「不利益事実」を伝えなかった呆れた言い分」ストレイ・ドッグ2005年2月21日)。

このために林田力は消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)に基づいてマンション売買契約を取り消し、売買代金の返還を求めて東急不動産を東京地方裁判所に提訴し、勝訴した(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地判平成18年8月30日、平成17年(ワ)第3018号)。

判決は以下のように東急不動産の不利益事実不告知を認定した。その上で、東急不動産に売買代金の全額支払いを命じた。

「被告(注:東急不動産)は、本件売買契約の締結について勧誘をするに際し、原告に対し、本件マンションの完成後すぐに北側隣地に3階建て建物が建築され、その結果、本件建物の洋室の採光が奪われ、その窓からの眺望・通風等も失われるといった住環境が悪化するという原告に不利益となる事実ないし不利益を生じさせるおそれがある事実を故意に告げなかった」

この判決は不動産取引に関して消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)を適用し契約の取消しを認めたリーディングケースである(佐藤裕一「東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口」MyNewsJapan 2009年9月3日)。

この東急不動産だまし売り裁判を契機として、インターネット上では東急リバブル・東急不動産に対する批判が急増した。「営業マンの態度が高慢」「頼みもしないDMを送りつけてくる」など「自分もこのような目に遭った」と訴訟の枠を越えた批判がなされ、炎上事件として報道された(「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威−「モノ言う消費者」に怯える企業」週刊ダイヤモンド2007年11月17日号39頁)。

林田力は2009年7月には東急不動産との裁判を綴ったノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』を出版する。『東急不動産だまし売り裁判』は『別冊サイゾーvol.1 タブー破りの本300冊 サイゾー11月号臨時増刊』(2010年11月1日発行)の「警察、学会、農業……の危険な裏 告発本が明らかにした「日本の闇」」で紹介された。林田力のコメントも掲載されている。

林田力は景観と住環境を考える全国ネットワーク・東京準備会「第3回首都圏交流会」(2009年11月24日)や「もめごとのタネはまちづくりのタネ研究会」定例会(2010年2月5日)でも東急不動産だまし売り裁判を報告した。

その後もマンション被害や住民運動を取材する。東急不動産だまし売り被害者として、林田力はマンション建設反対運動やゼロゼロ物件詐欺、追い出し屋被害に対しても強い共感をもって行動している。東京都世田谷区の二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)の住民被害や反対住民運動を詳細に紹介し、「世田谷問題を精力的に取材されているネット・ジャーナリスト」と評される。マンションだまし売りやゼロゼロ物件詐欺など悪徳不動産業者の実態を明らかにすることで、消費者や住民の権利拡張に寄与している。

林田力 wiki

 2003年6月、林田力は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替えなど)を隠して東京都内の新築分譲マンションをだまし売りされた。
 2004年12月、林田力は消費者契約法第4条第2項(不利益事実の不告知)に基づき、売買契約を取り消した。
 2005年2月18日、林田力は売買代金の返還を求めて東急不動産を東京地方裁判所に提訴した。
 2006年8月30日、東京地裁で原告(林田力)勝訴の判決が言い渡された(東京地判平成18年8月30日、平成17年(ワ)第3018号)。
 2007年1月23日、林田力は東急不動産だまし売り裁判の記事「不動産トラブルと消費者契約法」を発表した。
 2007年3月20日、林田力は記事「アトラス・渡辺代表 東急物件の構造設計」で一級建築士資格を持たない無資格者が東急不動産マンションの構造設計者になっていた事実を明らかにした。
 2007年3月23日、林田力は記事「東急コミュニティーがマンション管理人を営業活動に“流用”」で東急コミュニティーがマンション管理人をリフォームなど自社の営業活動に流用していた事実を明らかにした。
 2007年10月9日、林田力は記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」で東急不動産だまし売り裁判に対する東急リバブル・東急不動産の「お詫び」を取り上げる。
 2008年1月8日、林田力は記事「東急リバブル、またまた虚偽広告」で東急リバブル東陽町営業所のマンション「アルス東陽町301号室」仲介虚偽広告を取り上げる。
 2008年2月1日、林田力は記事「東急の新築マンションでも広告表記訂正」でブランズシティ守谷の虚偽広告を取り上げる。ブランズシティ守谷の広告は駅からの距離を実際より短く表示した。
 2008年2月18日、林田力は記事「ブランズシティ守谷の建築確認に審査請求」で茨城県守谷市の新築分譲マンション・ブランズシティ守谷の建築紛争を取り上げた。
 2009年2月6日、林田力は記事「【かんぽの宿問題】東急リバブル転売にみる民営化の問題」で東急リバブルが旧日本郵政公社から評価額1000円で取得した沖縄東風平(こちんだ)レクセンターを学校法人・尚学学園(那覇市)に4900万円で転売した問題を取り上げた。
 2009年7月1日、林田力は東急不動産との裁判を綴ったノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』を出版した。
 2009年9月28日、林田力は記事「東急東横線で車椅子の女性が転落死」で東急東横線多摩川駅で車椅子の女性が転落死した事件を取り上げた。
 2009年11月24日、林田力は景観と住環境を考える全国ネットワーク・東京準備会が主催する第3回首都圏交流会で東急不動産だまし売り裁判を報告する。
 2010年1月、林田力は二子玉川東第二地区市街地再開発(二子玉川ライズ2期)事業計画(案)に対する意見書を東京都に提出した。
 2010年2月5日、林田力は「もめごとのタネはまちづくりのタネ研究会」定例会で東急不動産だまし売り裁判を報告した。
 2010年4月20日、林田力は二子玉川東第二地区市街地再開発(二子玉川ライズ2期)事業計画(案)に対する口頭意見陳述を世田谷区玉川総合支所で実施した。
 2010年6月2日、林田力は記事「東急不動産の小日向マンションで建築確認に不備=東京・文京」で「(仮称)小日向プロジェクトII」(現ブランズタワー文京小日向)の建築基準法違反を取り上げた。
 2010年9月6日、林田力は記事「東急不動産係長がトラブル相手に嫌がらせ電話で逮捕」で東急不動産係長がトラブルとなった顧客に脅迫電話を繰り返して逮捕された事件を取り上げた。
 2010年2月11日、林田力は記事「ブランズ文京小石川Park Frontで近隣住民が工事被害」でブランズ文京小石川Park Frontの建築紛争を取り上げた。
 2010年3月17日、林田力は記事「金銭着服事件発表の東急コミュニティーでは文書流出も」で東急コミュニティーの金銭着服事件と文書流出事件を取り上げた。
 2011年10月18日、林田力は二子玉川東第二地区市街地再開発(二子玉川ライズ2期)組合設立認可決裁文書の情報非開示異議申し立てに対する口頭意見陳述を東京都庁第一庁舎で実施した。
 2011年11月7日、林田力は景観と住環境を考える全国ネットワーク「マンション紛争・都市問題首都圏交流サロン」で二子玉川ライズ問題や世田谷区デジタルコンテンツ問題、巨大アンテナ問題を報告した。
 2011年11月9日、林田力は世田谷区実施計画・行政経営改革計画素案に二子玉川ライズ補助廃止の立場から意見提出した。
 2012年3月22日、林田力は記事「東急は耐震工事を口実に古くからの住民の追い出しを図り住民は生活苦に陥る」で東急電鉄による東急大井町線大井町駅高架下住民追い出し問題を取り上げた。

林田力『東急不動産だまし売り裁判』

東急不動産消費者契約法違反訴訟を描くノンフィクション

 林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社)は東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた消費者(=原告)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号)で売買代金を取り戻した闘いの記録。

 裁判における当事者と裁判官の緊迫するやり取りを丹念に再現。個人が不誠実な大企業を相手に闘うドラマがある!

 裁判と並行して明らかになった耐震強度偽装事件の余波や欠陥施工、管理会社・東急コミュニティーの杜撰な管理にも言及し、深刻度を増すマンション問題の現実を明らかにする。東急不動産のために働いた地上げ屋(近隣対策屋、東急不動産工作員)が暗躍し、住環境を破壊する高層マンション建築紛争と共通するマンション建設の闇に触れる。

林田力『二子玉川ライズ反対運動』

 林田力『二子玉川ライズ反対運動』(マイブックル)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)に対する住民運動を記録したノンフィクションである。東京都世田谷区の二子玉川(ニコタマ)では街壊しが進行中である。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」や「二子玉川ライズ オフィス」など東急電鉄・東急不動産ら東急グループの営利目的の再開発によって、二子玉川の貴重な自然と近隣住民の住環境が破壊されている。

 自然と住環境を守るために住民運動側は住民集会や裁判、議会への陳情など様々な活動に取り組んでいる。本書では「にこたまの環境を守る会」「二子玉川東地区まちづくり協議会」ら住民団体の活動の一端を紹介する。

 また、同じく二子玉川で起きている住民運動である多摩川暫定堤防や三菱地所玉川一丁目マンションへの反対運動についても触れた。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者の林田力が東京都に提出した二子玉川東第二地区市街地再開発事業計画(案)への意見書及び口頭意見陳述原稿も収録した。

林田力『二子玉川ライズ反対運動2』

 林田力『二子玉川ライズ反対運動2』(マイブックル)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)の住環境破壊の実態や反対住民運動を記録したノンフィクションである。2010年に刊行した『二子玉川ライズ反対運動』の続編である。東京都世田谷区の玉川では東急電鉄や東急不動産ら東急グループ主体の再開発・二子玉川ライズによる住環境破壊が問題になっている。

 第一章では二子玉川ライズがダメな理由を明らかにする。

 第二章では裁判や集会など二子玉川ライズ反対運動の活動を述べる。二子玉川ライズ住民訴訟では実質和解という画期的な解決となった。

 第三章は二子玉川ライズ問題に対する様々な観点からのオピニオンを収録する。二子玉川ライズと東京スカイツリーや中野駅周辺再開発、海のピラミッド(熊本県)などの開発事業と共通する弊害を論じている。

 第四章では二子玉川ライズのビル風問題について住民と世田谷区の緊迫感ある協議内容を収録する。

 第五章は世田谷区議会を揺るがしたスキャンダル「二子玉川デジタル・コンテンツ問題」についてである。

 第六章では二子玉川ライズと同じ東急のトラブルとして、東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出し問題を取り上げる。二子玉川住民と大井町住民は同じ東急電鉄に苦しめられている住民として連携して活動している。

林田力『東急コミュニティー解約記』

 林田力『東急コミュニティー解約記』(パブ―)はマンションの管理会社を変更し、管理委託費を大幅に削減した事例の記録である。東急不動産が分譲したマンション・アルス東陽町(東京都江東区)では管理会社を独立系の会社に変更した結果、管理委託費を年間約120万円も削減でき、変更から1年後には一般会計の余剰金を修繕積立金会計に繰り入れるまでになった。

 林田力はアルス301号室の区分所有者であった。物件引渡し後に不利益事実不告知が判明したため、売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。売買代金を取り戻すまでは居住しており、管理組合理事長も務め、管理会社変更までの経緯にも関係していた。

 アルスでは売主・東急不動産の指定により、分譲当初から東急不動産の子会社の東急コミュニティー(東京都世田谷区)に管理を委託していた。管理委託費等は東急コミュニティーの言い値で決められている状況であった。しかし東急コミュニティーの杜撰な管理が次々と明らかになり、管理会社変更の機運が高まった。

【目次】修繕積立金不足発覚/事務所使用を正当化/管理組合文書漏洩/管理委託契約違反/管理事務報告/管理人の営業利用/粗末な管理費督促/防火管理者/創立記念日/管理会社変更引継ぎの杜撰/リプレースの効果/マンション仲介広告に注意