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『銀魂』第43巻、ゼロゼロ物件業者への対抗価値


空知英秋が『週刊少年ジャンプ』で連載中のSF時代劇漫画『銀魂』が面白い。2月3日に発売された単行本の第43巻は金魂編がメインである。『週刊少年ジャンプ』2011年44号掲載の金魂・第一訓「ストレートパーマに悪い奴はいない」から突入した。

金魂編は優等生的な坂田金時に主人公を乗っ取られるという斬新な展開である。金時は主人公の坂田銀時とは金髪でストレートパーマという点が相違するが、男気が溢れ、稼ぎもよく、志村新八や神楽ら仲間達から心酔されている。完璧な金と欠点だらけの銀が対比される。

金魂編では作品のタイトルまで「金魂」に変わっているという徹底ぶりである。単行本の表紙も第1巻と同じ絵柄で主人公が金時に変わっているとの遊び心がある。『週刊少年ジャンプ』連載時には分かりにくかった『銀魂』本来のサブタイトルと「金魂」としてのサブタイトルが目次で整理されている。

掟破りの展開に加えて他作品のパロディなどギャグ満載の金魂編であるが、メッセージ性も強烈である。それは優等生的な金時よりも不完全な銀時に魅力があるという主張である。結末の会話がコミックスでは変わっており、より不完全性の魅力を強調する内容になった。カバー折り返しの作者コメントも銀への愛着が感じられる。

完璧な人間よりも欠点やドジなところがあった方が魅力的なキャラクターになる。これはキャラ作りの鉄則である。尾田栄一郎『ONE PIECE』第65巻では読者の質問コーナー「SBS」で、主人公のルフィよりも強力な能力者が続々登場していることに対し、著者は「ゴムのような面白さがなければ長く付き合えない」と答えている。バトル漫画でも圧倒的な強さが必ずしもキャラの魅力になるとは限らない。

しかし、単に親しみをもたせるために不完全なキャラにするだけならばステレオタイプ化する。『銀魂』第42巻収録の「漫画という画布に人生という筆で絵を描け」では漫画家志望の持ち込み原稿の主人公が皆、「腹減った」という食い意地が張ったキャラであることを風刺している。

世間的な意味での優等生に魅力はないが、単に欠点を持たせるだけでも面白味がない。欠点や長所でないと考えているものに新たな価値を付加してこそクリエイティビィティである。『ONE PIECE』のルフィは強そうではなくても、面白さという漫画ならではの価値でゴム人間となった。

銀時の不完全性にも価値がある。金時によって修正された銀時の欠点の一つに家賃滞納がある。味方のたまにも家賃滞納を忘れないと言われるほど、家賃滞納は強調されている。家賃を滞納するキャラクターが善玉で、家賃を支払うキャラクターが悪玉である。家賃滞納は一般的には好ましいことではないが、昨今は家賃滞納を口実にした不法が横行し、社会問題になっている。

賃貸不動産では賃借人を食い物にする貧困ビジネスが跋扈している。ゼロゼロ物件などでは僅か一日の家賃滞納に過酷な追い出し屋の嫌がらせや高額な違約金請求が行われている。サラ金でも行われない未明の家賃取り立てや嫌がらせの貼り紙を繰り返す。また、無断で家屋の鍵を交換して高額の鍵交換費用を請求する。さらに無断で家屋に浸入して家財を処分・換金してしまうなどの人権侵害が行われている。

この種のゼロゼロ物件業者の追い出し行為が許されざる人権侵害であることは当然である。一方で「盗人にも三分の理」という言葉があるようにゼロゼロ物件業者にも拠り所となる論理がある。それは「家賃を払っていない賃借人が悪い」「文句があるならば家賃を払え」である。

家賃滞納という単なる債務弁済の遅延は、違約金請求という暴利行為や追い出し屋の人権侵害を正当化する根拠にならない。しかし、残念なことに人権意識の低い後進的な日本社会では、ゼロゼロ物件業者の論理に同意してしまう人々も少なくない。それ故に「住まいは人権」という論理が重要になる(林田力「マンション建設反対運動は人権論で再構築を」PJニュース2011年6月17日)。

「確かに『支払いを遅らせたのは,あなたでしょう!』と厳しく言われたら,なんとなく『そうかな』と思ってしまうかもしれないが,それが全てを根こそぎ奪い取ることを正当化する理由にならないことは,また,よくわかることだろう。」(津久井進の弁護士ノート「ゼロゼロ物件被害にみる形式的コンプライアンス」2008年7月18日)

ゼロゼロ物件被害者は家賃滞納に後ろめたさを感じる必要はない。家賃を滞納し、自己を不完全な主人公と認める銀時のように堂々と業者の不法を訴える資格がある。家賃滞納という属性は親しみを持たせるための単なる欠点というよりも、家賃滞納者の弱みに付け込む貧困ビジネスに対抗する価値を生み出している。

ゼロゼロ物件の被害者が被害者でもあるにもかかわらず、家賃滞納者ということで逆に非難される傾向のある日本社会において、家賃は滞納するが、真っ直ぐな魂を持ったヒーローという設定の『銀魂』はゼロゼロ物件業者に対抗する価値を生み出す効果がある。

『銀魂』はパロディや下ネタが多く、PTA推奨という意味合いでの教育的な作品ではない。しかし、単行本第40巻収録のギャグ短編では携帯メール依存症を批判した。また、第7巻収録の第54訓「人の名前とか間違えるの失礼だ」で、追伸の使用をカッコいいと勘違いする無学者を風刺するギャグを描いた(林田力「追伸に対する一考察」PJニュース2010年12月25日)。教育的作品の説教臭さとは無縁ながら、教育的価値を盛り込む『銀魂』に大いに期待する。

主役について考えさせられた金魂編であるが、準主役の立ち位地も考えさせられる。銀時、志村新八、神楽の三人が万事屋トリオで、新八と神楽は他の脇役とは格が違う。かぶき町四天王編では新八が椿平子、神楽がマドマーゼル西郷を倒すという見せ場を作った。

これに対して金魂編では二人の存在感が薄い。仲間との絆の確認では月詠、九兵衛、さっちゃんとのシーンが印象的である。『銀魂』が歴史を重ねて魅力的なキャラクターを作ってきたために相対的に当初の主要キャラの活躍が少なくなった。

一方で金魂編の後半では万事屋トリオに志村妙を加えた四人を、はじまりの四人と特別視する。新八や神楽が一般レギュラーと同じレベルになるか、準主役扱いを維持するかにも注目である。(林田力)


林田力

林田力は『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社、2009年)の著者であり、東急不動産消費者契約法違反訴訟原告である。東京都中野区生まれ。

Hayashida Riki is the author of "The Suit TOKYU Land Corporation's Fraud: How to Win" and the plaintiff Who Fought Against TOKYU Land Corporation.

林田力は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実を隠して東京都内の新築分譲マンションをだまし売りされた。東急リバブル・東急不動産は新築マンション引き渡し後に隣地が建て替えられて、日照・眺望・通風がなくなることを知っていたにもかかわらず故意に告げなかった。隣地が建て替えられれば部屋は真っ暗になり、作業所になるため騒音も発生する(山岡俊介「東急不動産側が、マンション購入者に「不利益事実」を伝えなかった呆れた言い分」ストレイ・ドッグ2005年2月21日)。

このために林田力は消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)に基づいてマンション売買契約を取り消し、売買代金の返還を求めて東急不動産を東京地方裁判所に提訴し、勝訴した(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地判平成18年8月30日、平成17年(ワ)第3018号)。

判決は以下のように東急不動産の不利益事実不告知を認定した。その上で、東急不動産に売買代金の全額支払いを命じた。

「被告(注:東急不動産)は、本件売買契約の締結について勧誘をするに際し、原告に対し、本件マンションの完成後すぐに北側隣地に3階建て建物が建築され、その結果、本件建物の洋室の採光が奪われ、その窓からの眺望・通風等も失われるといった住環境が悪化するという原告に不利益となる事実ないし不利益を生じさせるおそれがある事実を故意に告げなかった」

この判決は不動産取引に関して消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)を適用し契約の取消しを認めたリーディングケースである(佐藤裕一「東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口」MyNewsJapan 2009年9月3日)。

この東急不動産だまし売り裁判を契機として、インターネット上では東急リバブル・東急不動産に対する批判が急増した。「営業マンの態度が高慢」「頼みもしないDMを送りつけてくる」など「自分もこのような目に遭った」と訴訟の枠を越えた批判がなされ、炎上事件として報道された(「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威−「モノ言う消費者」に怯える企業」週刊ダイヤモンド2007年11月17日号39頁)。

林田力は2009年7月には東急不動産との裁判を綴ったノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』を出版する。『東急不動産だまし売り裁判』は『別冊サイゾーvol.1 タブー破りの本300冊 サイゾー11月号臨時増刊』(2010年11月1日発行)の「警察、学会、農業……の危険な裏 告発本が明らかにした「日本の闇」」で紹介された。林田力のコメントも掲載されている。

林田力は景観と住環境を考える全国ネットワーク・東京準備会「第3回首都圏交流会」(2009年11月24日)や「もめごとのタネはまちづくりのタネ研究会」定例会(2010年2月5日)でも東急不動産だまし売り裁判を報告した。

その後もマンション被害や住民運動を取材する。東急不動産だまし売り被害者として、林田力はマンション建設反対運動やゼロゼロ物件詐欺、追い出し屋被害に対しても強い共感をもって行動している。東京都世田谷区の二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)の住民被害や反対住民運動を詳細に紹介し、「世田谷問題を精力的に取材されているネット・ジャーナリスト」と評される。マンションだまし売りやゼロゼロ物件詐欺など悪徳不動産業者の実態を明らかにすることで、消費者や住民の権利拡張に寄与している。

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 2003年6月、林田力は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替えなど)を隠して東京都内の新築分譲マンションをだまし売りされた。
 2004年12月、林田力は消費者契約法第4条第2項(不利益事実の不告知)に基づき、売買契約を取り消した。
 2005年2月18日、林田力は売買代金の返還を求めて東急不動産を東京地方裁判所に提訴した。
 2006年8月30日、東京地裁で原告(林田力)勝訴の判決が言い渡された(東京地判平成18年8月30日、平成17年(ワ)第3018号)。
 2007年1月23日、林田力は東急不動産だまし売り裁判の記事「不動産トラブルと消費者契約法」を発表した。
 2007年3月20日、林田力は記事「アトラス・渡辺代表 東急物件の構造設計」で一級建築士資格を持たない無資格者が東急不動産マンションの構造設計者になっていた事実を明らかにした。
 2007年3月23日、林田力は記事「東急コミュニティーがマンション管理人を営業活動に“流用”」で東急コミュニティーがマンション管理人をリフォームなど自社の営業活動に流用していた事実を明らかにした。
 2007年10月9日、林田力は記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」で東急不動産だまし売り裁判に対する東急リバブル・東急不動産の「お詫び」を取り上げる。
 2008年1月8日、林田力は記事「東急リバブル、またまた虚偽広告」で東急リバブル東陽町営業所のマンション「アルス東陽町301号室」仲介虚偽広告を取り上げる。
 2008年2月1日、林田力は記事「東急の新築マンションでも広告表記訂正」でブランズシティ守谷の虚偽広告を取り上げる。ブランズシティ守谷の広告は駅からの距離を実際より短く表示した。
 2008年2月18日、林田力は記事「ブランズシティ守谷の建築確認に審査請求」で茨城県守谷市の新築分譲マンション・ブランズシティ守谷の建築紛争を取り上げた。
 2009年2月6日、林田力は記事「【かんぽの宿問題】東急リバブル転売にみる民営化の問題」で東急リバブルが旧日本郵政公社から評価額1000円で取得した沖縄東風平(こちんだ)レクセンターを学校法人・尚学学園(那覇市)に4900万円で転売した問題を取り上げた。
 2009年7月1日、林田力は東急不動産との裁判を綴ったノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』を出版した。
 2009年9月28日、林田力は記事「東急東横線で車椅子の女性が転落死」で東急東横線多摩川駅で車椅子の女性が転落死した事件を取り上げた。
 2009年11月24日、林田力は景観と住環境を考える全国ネットワーク・東京準備会が主催する第3回首都圏交流会で東急不動産だまし売り裁判を報告する。
 2010年1月、林田力は二子玉川東第二地区市街地再開発(二子玉川ライズ2期)事業計画(案)に対する意見書を東京都に提出した。
 2010年2月5日、林田力は「もめごとのタネはまちづくりのタネ研究会」定例会で東急不動産だまし売り裁判を報告した。
 2010年4月20日、林田力は二子玉川東第二地区市街地再開発(二子玉川ライズ2期)事業計画(案)に対する口頭意見陳述を世田谷区玉川総合支所で実施した。
 2010年6月2日、林田力は記事「東急不動産の小日向マンションで建築確認に不備=東京・文京」で「(仮称)小日向プロジェクトII」(現ブランズタワー文京小日向)の建築基準法違反を取り上げた。
 2010年9月6日、林田力は記事「東急不動産係長がトラブル相手に嫌がらせ電話で逮捕」で東急不動産係長がトラブルとなった顧客に脅迫電話を繰り返して逮捕された事件を取り上げた。
 2010年2月11日、林田力は記事「ブランズ文京小石川Park Frontで近隣住民が工事被害」でブランズ文京小石川Park Frontの建築紛争を取り上げた。
 2010年3月17日、林田力は記事「金銭着服事件発表の東急コミュニティーでは文書流出も」で東急コミュニティーの金銭着服事件と文書流出事件を取り上げた。
 2011年10月18日、林田力は二子玉川東第二地区市街地再開発(二子玉川ライズ2期)組合設立認可決裁文書の情報非開示異議申し立てに対する口頭意見陳述を東京都庁第一庁舎で実施した。
 2011年11月7日、林田力は景観と住環境を考える全国ネットワーク「マンション紛争・都市問題首都圏交流サロン」で二子玉川ライズ問題や世田谷区デジタルコンテンツ問題、巨大アンテナ問題を報告した。
 2011年11月9日、林田力は世田谷区実施計画・行政経営改革計画素案に二子玉川ライズ補助廃止の立場から意見提出した。
 2012年3月22日、林田力は記事「東急は耐震工事を口実に古くからの住民の追い出しを図り住民は生活苦に陥る」で東急電鉄による東急大井町線大井町駅高架下住民追い出し問題を取り上げた。

林田力『東急不動産だまし売り裁判』

東急不動産消費者契約法違反訴訟を描くノンフィクション

 林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社)は東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた消費者(=原告)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号)で売買代金を取り戻した闘いの記録。

 裁判における当事者と裁判官の緊迫するやり取りを丹念に再現。個人が不誠実な大企業を相手に闘うドラマがある!

 裁判と並行して明らかになった耐震強度偽装事件の余波や欠陥施工、管理会社・東急コミュニティーの杜撰な管理にも言及し、深刻度を増すマンション問題の現実を明らかにする。東急不動産のために働いた地上げ屋(近隣対策屋、東急不動産工作員)が暗躍し、住環境を破壊する高層マンション建築紛争と共通するマンション建設の闇に触れる。

林田力『二子玉川ライズ反対運動』

 林田力『二子玉川ライズ反対運動』(マイブックル)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)に対する住民運動を記録したノンフィクションである。東京都世田谷区の二子玉川(ニコタマ)では街壊しが進行中である。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」や「二子玉川ライズ オフィス」など東急電鉄・東急不動産ら東急グループの営利目的の再開発によって、二子玉川の貴重な自然と近隣住民の住環境が破壊されている。

 自然と住環境を守るために住民運動側は住民集会や裁判、議会への陳情など様々な活動に取り組んでいる。本書では「にこたまの環境を守る会」「二子玉川東地区まちづくり協議会」ら住民団体の活動の一端を紹介する。

 また、同じく二子玉川で起きている住民運動である多摩川暫定堤防や三菱地所玉川一丁目マンションへの反対運動についても触れた。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者の林田力が東京都に提出した二子玉川東第二地区市街地再開発事業計画(案)への意見書及び口頭意見陳述原稿も収録した。

林田力『二子玉川ライズ反対運動2』

 林田力『二子玉川ライズ反対運動2』(マイブックル)は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)の住環境破壊の実態や反対住民運動を記録したノンフィクションである。2010年に刊行した『二子玉川ライズ反対運動』の続編である。東京都世田谷区の玉川では東急電鉄や東急不動産ら東急グループ主体の再開発・二子玉川ライズによる住環境破壊が問題になっている。

 第一章では二子玉川ライズがダメな理由を明らかにする。

 第二章では裁判や集会など二子玉川ライズ反対運動の活動を述べる。二子玉川ライズ住民訴訟では実質和解という画期的な解決となった。

 第三章は二子玉川ライズ問題に対する様々な観点からのオピニオンを収録する。二子玉川ライズと東京スカイツリーや中野駅周辺再開発、海のピラミッド(熊本県)などの開発事業と共通する弊害を論じている。

 第四章では二子玉川ライズのビル風問題について住民と世田谷区の緊迫感ある協議内容を収録する。

 第五章は世田谷区議会を揺るがしたスキャンダル「二子玉川デジタル・コンテンツ問題」についてである。

 第六章では二子玉川ライズと同じ東急のトラブルとして、東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出し問題を取り上げる。二子玉川住民と大井町住民は同じ東急電鉄に苦しめられている住民として連携して活動している。

林田力『東急コミュニティー解約記』

 林田力『東急コミュニティー解約記』(パブ―)はマンションの管理会社を変更し、管理委託費を大幅に削減した事例の記録である。東急不動産が分譲したマンション・アルス東陽町(東京都江東区)では管理会社を独立系の会社に変更した結果、管理委託費を年間約120万円も削減でき、変更から1年後には一般会計の余剰金を修繕積立金会計に繰り入れるまでになった。

 林田力はアルス301号室の区分所有者であった。物件引渡し後に不利益事実不告知が判明したため、売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。売買代金を取り戻すまでは居住しており、管理組合理事長も務め、管理会社変更までの経緯にも関係していた。

 アルスでは売主・東急不動産の指定により、分譲当初から東急不動産の子会社の東急コミュニティー(東京都世田谷区)に管理を委託していた。管理委託費等は東急コミュニティーの言い値で決められている状況であった。しかし東急コミュニティーの杜撰な管理が次々と明らかになり、管理会社変更の機運が高まった。

【目次】修繕積立金不足発覚/事務所使用を正当化/管理組合文書漏洩/管理委託契約違反/管理事務報告/管理人の営業利用/粗末な管理費督促/防火管理者/創立記念日/管理会社変更引継ぎの杜撰/リプレースの効果/マンション仲介広告に注意