林田力「新しい知的財産」1999.11.14 Top
digital等、新技術の発達・情報化の進展は新しい知的財産を生み出しており、他方で知的財産の利用方法も多様化している。そのため創作者に知的財産を排他的に支配させる従来の知財法の枠組み自体が現状にそぐわなくなっているとする見解もある。そこで本論では、新しい知的財産を各論的に分析して、それらが従来の知的財産とそれほど離れたものではないことを明らかにするとともに、新しい知的財産の知的財産体系中の位置づけについて論じる。尚、本論で取り上げた「新しい知的財産」の中には従来より議論されているものや、既に法制化されたものもあり、必ずしも新しいとは言えないものもあるが、典型的な知的財産に比べて相対的に新しいと言えるから新しい知的財産に含めた。
科学的発見も知的財産に含まれる(WIPO設立条約2(viii)、宇宙基地協定(1988作成)21(1))。科学は万人の財産でありその成果を独り占めするのは科学の尊厳をそこなうという意識が強いが[1]、経験科学は全て経験的現象の多様性に加工を施す試みとしての性格を持っているから[2]、科学的認識は経験の素朴な反映を超えており、むしろ我々の発明に係るものである[3]。発見の対象は発明と異なり新たに創られたものではなく既に自然界に存するものだが、外界に対する人の認識はその人の認識能力に依存しており、人の認識にもたらされる対象の表象は対象自体とは異なる[4]。故に発見者の知的労力に報いることは正当だが、科学的所有権scientific property rightという形で特定人の専権に属させるのは不当であるし、その実施可能性も疑わしい[5]。
米国特許法100(a)はThe term “invention” means invention or discovery.と定義するが、このdiscoveryはinventionの重複語に過ぎず、発見discoveryは特許権が与えられるべき性質のものsubject matterでないとされる(Nippon Electric Glass Co. v. Sheldon 539 F.Supp 542 (S.D. N.Y. 1982))[6]。中国専利法(1992改正)25条は科学的発見には特許を付与しない、と定める。技術には自然法則の利用の概念が含まれるとする見解もある[7]。しかし自然法則も産業に利用されるものは特許性を持つ。例えば味の素特許(M41年14805号)は、うま味成分がグルタミン酸塩であるという学術上の発見に起因するが、これを基礎とする調味料の製造法という新規な発明である(大判S17.12.4審決公報号外23-725調味料製法事件)。
programがhardwareと一体として、そのhardwareの性能を高めたり、制御したりする方法・装置として出願すれば登録されうる(e.g.二進数data変数処理方法(特公S56-46168)、医療事務system(特公S58-43779)、図書館仮装置(特公S58-51299))。米国判例法はソフトウェア特許の保護対象を拡大する傾向にある(AT & T Corp. v. Excel Communications, Inc., 172 F. 3d 1352 (Fed. Cir. 1999); State Street Bank & Trust Co. v. Signature Fin. Group, Inc. 149 F. 3d 1368 (Fed. Cir. 1998).)。
algorismについては特許性を否定する見解もあるが(Gottschalk v. Benson and Tabot 409 U.S. 63 (1972))、単に数学的algorismを含むというだけで特許能力は否定されない(Parker v. Flook 437 U.S. 584 (1987))。「最適資源割当方法(カーマーカー法、線型計画法linier programming)」は数学の解法だが、産業へ応用することで特許の対象になった(U.S. Patent 4744026-8(1988))[8]。computerを用いてゴムの加硫成型をcontrolする方法(Diamond v. Diehr 209 U.S.P.Q. 1 (1981))、証券会社の現金管理勘定のためのdata処理方法(Paine, Webber, Jackson and Curtis v. Merrill Lynch, Pierce, Fenner and Smith v. Reynolds (3rd Party Defendant) 564 F. Supp. 1538 (1983, D. Delaware))。State Street Bank v. Signature (CAFC 1998.7.23判決)は、投資信託の時価評価についてのsystemをclaimする特許について、特許性の認められ得る対象ではないとした地裁の判断を破棄した。U.S.ではInternet business上のideaにも特許が認められ始めている[9]。
文字・数字・記号等を組み合わせた暗合作成方法は自然法則を利用したものではないから発明ではないとした例(東高判S25.2.28行集1-7-1066、その上告審最判S28.4.30民集7-4-461、東高判S28.11.14行集4-11-2716)、書籍の余白をカットとして趣味的内容を与えると共に広告としての目的をもたせる工夫は実用新案たりえないとした例(東高判S26.7.31行集2-8-1273)、永久運動機関は自然法則に反するので発明ではないとした例(東高判S27.4.4行集3-3-563、東高判S31.3.31行集7-3-640、東高判S42.6.27取消集S42-441、東高判S48.6.29判タ298-255)がある。電柱及び広告板を数個の組とし、電柱につけた止具により移転巡回掲示する広告方法は、広告板の移動巡回に少しも自然力を利用しないため発明を構成しないとした例がある(東高判S31.12.25行集7-1-3157電柱広告方法事件)。
生物については工業製品と異なり環境等によって個体差が生じうるし、突然変異もあり反復可能性がないとの見解もあるが[10]、工業製品でも製品のばらつきは皆無ではなく個体差があっても種として固定されていれば反復可能性は認められる。斉藤誠「植物新品種の種苗法による保護と特許法による保護」斉藤博=牧野利秋編・知的財産関係訴訟法(青林書院1997)476は「明細書の記載と当該寄託物の分析等を併せ再現が可能ならば問題はない」とする。自然法則の利用との要件は削除すべきとの立法論もある[11]。遺伝子の塩基配列が新規なもので優れた有用な機能があれば特許性が認められる[12]。
バイオ市場は急激な成長が見込めるため[13]、遺伝子特許の出願競争が激化している[14]。例えば米国のバイオベンチャー企業は人間の遺伝子1万個以上に関係する仮特許を米国特許商標庁に出願した[15]。遺伝子特許には生命を金に換算するものという拒絶反応や特許料の支払いによる医療費の高騰の懸念がある[16]。しかし民間企業ができることを政府系研究機関が巨額の税金を投入して研究することの方が疑問である。
ハイテク金融は一度市場が経済状況の悪化をマイナス要因とみなすと大量の短期資本の連鎖的な流出と逃避を引き起こすと非難されるが[17]、ハイテク金融商品はリスクヘッジのために考案されるのであり、その開発は金融システムの安定に貢献する。
単なる精神活動・人為的な取極は客観的に実在しないから発明から除外されるとする見解もあるが、それらは認知の対象になる点で3次元空間における客観的実在と変わらない。例えば夢の中の経験も当人にとっては現実にいるのと同じように認知の対象となる[18]。他方、発明物は人間がいなくても存在するかもしれないが、例えば砂漠の真中にぽつんと発明がある情景を想起すれば理解できるように、それは実在するとしてもそれを発明として認識する人がいなければ岩石と変わらないだろう。技術とは問題解決方法・手段であり問題は人間が設定するものだから、人間の精神活動を離れて発明は成り立たない。
自然科学上の法則を説明した文章というだけでは著作物たりえず(大阪地判S54.9.25判タ397-152発光ダイオード事件)、それらが創作性ある表現で説明された場合に著作物になるとする見解がある(東京地判S53.6.21無体10-1-287、判タ366-342日照権事件(久保利英明・著作権判例百選2版98事件))[19]。事実そのものは著作権の対象にならないが事実を言語で表現した以上、事実の説明であってもoriginalな表現である。吉田大輔「著作物認定についての基本的考え方」斉藤博=牧野利秋編・知的財産関係訴訟法(青林書院1997)62は「『事実』を扱っていても、そこに記事を書く者の視点や分析などが含まれておりその者の個性が現れていれば著作物たりうる」とする。
勿論、同一の事象を説明する場合は似通うことが多いがその場合は原著作物に依拠していないから著作権侵害にならない[20]。又、歴史上の事実・既に公にされている先行資料に記載された事実に基づく筋の運びやstory展開が同一であっても、著作物の内面形式の同一性を基礎付けない(名古屋地判H6.7.29判時1540-94春の波涛事件)。
効率的・高速なdataの処理を目的とするoperation system, OSは、科学における理論ということができ、その合理性が専ら追求されるものだが、各種の情報の選択・組合せに作成者の個性が反映されていれば著作物たりうる(東京地判S62.1.30無体19-1-1(判時1219-48) Microsoft事件)。
公表前のnewsの不正取得が営業秘密侵害になりうるとしても(International News Service v. Associated Press, 248 U.S. 215 (1918))[21]、newsの対象としての事実には著作権は及ばないが[22]、客観的事実を素材とする新聞記事も選択された素材の内容・量・構成等により、記事の主題についての著作者の称賛・行為・批判・断罪・情報価値に対する評価等の思想・感情が表現されている(東京地判H6.2.18判時1506-201 コムライン事件)。「時事の伝達にすぎない雑報及び時事の報道(著10(2))」とは単なる日々の社会事象そのままの報道記事を意味し(東京地判S47.10.11無体4-2-538民青の告白事件)、これに該当するのは新聞記事のごく一部である[23]。
interfaceはmachineとの関わりの最前線であり、その作成には創作的労力を要するからその権利は認められるべきである[24]。米国ではbar chart上に印刷iconが表示され、その印刷iconをclickすることで印刷機能が実行されるという特許が成立しており(USP 5,140,677)、Graphical User Interface, GUIをhardwareと関連付けて記載することによりinterfaceそのものを特許として権利化することは可能な状況にある[25]。尚、protocolもinterfaceと同様知的財産性が問題となっている。
domain nameはインターネット上の数字で表示される住所に対応するアルファベットの文字列を指す(WIPO, Standing Committee on the Law of Trademarks, Industrial Designs and Geographical Indications 1998.7.17)[26]。それは識別標識としての機能も果たしており、広告力向上のために、自社home pageとは別に製品名をdomain名としたpageを開設したり(ex. http://www.windows95.com/)、domain名を企業名とするInternet関連企業もある。日立America社のWeb siteを構築したNew YorkのAgency.Com社もそうした企業の一つである。多くの企業にとってドメイン登録は事業発展の足がかりとして重要な意味をもつ。このように独自domain nameへの需要があるため、domain名の取得代行やproviderのserver上で独自domain名を使えるserviceもある[27]。そこでdomain nameと商標権・商号権との抵触が問題となる[28]。USPTO (http://www.uspto.gov/web/offices/tac/domain/tmdomain.htm)はdomain nameがcontentsやserviceの表示として識別性を持っていることを商標登録の要件とする。
ドメインネーム登録者が商標権者と同種の事業を行っており、その一環として当該ドメインネームを使用してウェッブサイトを開設した場合は商標法2条(3)7号の使用に該当し商標権侵害になる。米国でもこの場合に混同の虞を認めた例がある(Cardservice International, Inc. v. McGee, 950 F. Supp. 737 (E.D. Va. 1997).)。
登録商標が他人にドメインネームとして登録されると、商標権者は商標をドメインネームとして使用できなくなるから、インターネットにおける当該商標の自他商品識別力は減少(Intermatic Corp. v. Toeppen, 947 F. Supp. 1227 (N.D. Ill. 1996))乃至は除去される(Panavision International, L.P. v. Toeppen, 945 F. Supp. 1296 (C.D. Cal. 1996))。ドメインネームcandyland.comによるアダルトサイト運営はCANDYLANDの商標をdiluteする(Hasbro, Inc. v. Internet Entertainment Group, Ltd., 40 U.S.P.Q. 2d 1479 (W.D. Wash. 1996).)。同様にToys”R”US社がAdults R Usというアダルトサイト運営者を訴え勝訴した例もある(Toys”R”US, Inc. v. Akkaoui 40 U.S.P.Q. 2d 1836 (N.D. Cal. 1996).)。
日本における登録機関はJPNICで通産省・郵政省・科学技術庁共管の公益法人である。
ただJPNICが1999年3月迄にISPの多くを「or」から「ne」domainへ移行させたようにdomain名は変わりうる不安定なものである。又、World Wide Web, WWWの魅力はlinkからjumpできる点にあり(hypertext)、大半のuserは検索engineからnet surfingしているだろうし、よく見るhome pageはbookmark(Netscape Communicator)やfavorite(Internet Explorer)に登録するだろうから、domain名を使うことはない。しかも普通Uniform Resource Locator, URLはbrowser[29]上部に表示されるが、画面を広くしてpageを見やすくするためにaddress barを消した場合は見ることもない。更にURLは長くて入力に不便なため、短い文字・数字列を入力するだけで所定のhome pageにaccessするsystem(Nifty serve, Go command、ディアンドアイシステムズ・Hatch Inside)も提供されている[30]。それ故domain nameについて知らなくてもInternetは可能だが、他方IE 4.0では履歴はdomain毎のfolderに整理され、favoriteにもURLが表示されるし、URLを途中まで入力するとcomputerが完成させてくれる auto complete機能があり(IE 5.0ではauto complete機能はURLを途中まで入力すると該当URLを一覧表示する形式に変更された)、URLがより身近になっている。
ドメインネームは一つしかないため、一つのドメインネームをめぐって正当な商標権者同士が争うという事態も生じうる[31]。そのためsub domain (e.g. com domain)の増加という技術的解決も必要である。しかしこれだけでは同一名称を異業種で使用している状況でのdomain紛争は予防できてもcyber squat紛争は抑止できない[32]。
従来はドメインネーム紛争の多くは当事者間で解決される傾向があった[33]。ドメインネームの登録紛争の仲裁は工業所有権仲裁センターで行われている[34]。
中国では国務院情報弁公室の管轄下にある中国インターネット・ネットワーク情報センターが「インターネット・ドメイン登録暫定管理方法」の規定に基づき管理している[35]。登録は申請順で同一ドメインが既に登録されている場合は許可されない。
地理的表示は、特定の業者の単独所有物ではなく、当該産地の業者は皆使えるものである。それでも原産地の業者は自己の産品に地理的表示を使うことで私的利益を引き出しており、又、商品の原産地を誤認させるような表示をした者等に対し、差止請求権を行使できるのであり(不競法2(1)10号、(3))、これを不当表示規制等の警察規制の問題のみに矮小化してはならない。地理的表示は当該産地の業者の共有財産である。
共同所有には、総有・合有・狭義の共有があるとされるが[36]、総有・合有はGermanic社会の前近代的村落・家族共同体の所有形態を表す道具概念であり[37]、個人の尊厳を旨とする(民法1条の2)近代的法律関係に用いるのは妥当ではない[38]。勿論、個人主義社会においても団体的生活関係は存在し、そこでの所有形態が総有・合有に類似することもあり得る。だがそれは特殊な団体的原因から共有が修正を受けたものに過ぎず、総有・合有概念を出発点として演繹的に結論を出したのではない。そして総有・合有的と言える場合でもできる限り団体的規制を弱め共有に近づけて考えるのが、個人主義を基調とする近代民法の正しい解釈態度である。例えば総有・合有は全員が共同してのみ管理処分権を行使できる共同所有形態とされるが(入会権につき、最判S41.11.25民集20-9-1921)、最判S57.7.1民集36-6-891は入会権者の使用収益権能が単独で行使できることから、個々の入会権者による使用収益権の確認・妨害排除請求を認めた。又、改正民訴法の要綱試案[39]では共同所有関係にある原告側が固有必要的共同訴訟となる場合において、共同原告となるべき者のうち一部の者が訴えの提起を拒んだときは、その者に対し参加命令を発することにより、その余の者が訴えを提起できるようにすべきと提案された。
知的所有権は有体物を念頭に置いた民法の共有規定とは異なった扱いを必要とするが、それは客体の無体性から導かれる。狭義の共有では持分譲渡は自由だが[40]、知的所有権の共有者の持分の譲渡、質入れ、利用許諾には、他の共有者の同意を必要とし(著56(1)(2)、特73(1)(3)、実26、意36、商標35、半導体14(1)(3))、合有的性格がみられる[41]。特許等を受ける権利もこれに準じる(特許法33条3項、実用新案法11条2項、意匠法15条2項、商標法13条2項)。又、地理的表示は原産地で営業を行えば、使用でき、他に移転すれば使用できなくなり、使用できなくなっても何らの補償もなされないことから、村の中で一戸の世帯を構えれば、権利者と認められ、村外に転出すると権利者たる資格を失い、持分や分割請求権の観念のない総有に類似する面もある[42]。しかし地理的表示の権利者間には団体的な結合は必要とされない。知的所有権の共有制度の趣旨は団体的所有関係の融和を護持し、仲間割れを禁圧することにはなく、分離不能な知的財産における複数人の権利関係の明確化にある[43]。
地理的表示をはじめ、商品の品質、原材料、効能、用途等を普通に表示しただけの記述的標章descriptive markはその表示が特定の商品・役務を示すことにならないため自他商品識別力をもたず、特定人の単独所有物ではない(商標登録につき、商標法3条1項3号。e.g.「柿茶」(東京地判H6.11.30判時1521-139)、「ダイジェスティブ」(東高判H3.1.29判時1379-130)、”YOU HAVE MAIL”[44])。例えば「ORGANIC」は有機農産物を原料に使用したものと解されるし(東高判H11.9.30判時1699-140)、「COPIER」は「電子応用の複写機」「複写機能を有する機械装置」という商品の品質を表す語として普通に用いられている(東高判H8.6.18判時1579-33)。
しかし記述的標章であっても、特定の商品について長期間独占的に使用され、特定の商品を表すものとしての意味を生じた場合、派生的な意味secondary meaningを有するに至ったとされ[45]、商標登録を受けることができ(商標3(2)。米国商標法2)、独占の対象になる。「ミルキー」「Milky(審決S34.3.10審決公報194-69)」「信州凍豆腐(審決S38.1.21審決公報340-35)」「大島椿(審決S40.6.11審決公報454-93)」は使用によって通用力を有するに至ったと認められた。「ミルクドーナツ」も永年の使用により特別顕著性の取得を認められた(東高判S49.9.17無体6-2-257)。但し登録されても、商品取引上何人にとっても必要な表示には商標権の効力が及ばないので(商標法26条)、例えば「牛乳石けん」というの登録商標があったとしても、これを品質表示として使用する場合は商標権の侵害にはならない[46]。
「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であるであることを認識できる(商標3(2))」商標とは単に自他商品識別力のみならず独占適応性を有することも必要であり[47]、更に外観上の構成から識別力があることを要件とする見解もある[48]。しかし「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であるであることを認識できる」とはあくまで自他商品識別力の現実の存否のみを規定しており、これらに該当するかどうかの判断にあたってそれ以外の要素を読み込むべきではない[49]。
普通名称である出願商標の表示する商品を含む近似の商品を広く指定商品とした場合は、出願商標の表示する商品以外の指定商品との関係ではその商品の普通名称のみからなる商標(商標3(1)1号)とは言えず、識別力がないと判断される限りで商標法3(1)6号で拒絶される(東高判H2.4.12無体22-1-284合資会社八丁味噌事件)。
本来自由使用の対象が特定人の権利の対象になるのは上記の例に限定されない。例えば流木権がそうである。河川で流木することは、権利ではなく自由使用にすぎないが、特定人が多年継続的にある河川で流木することにより利益を享受し、これが法律上保護すべき価値ありと認められ、かつ法的信念により慣習法として認められる程度に達する時は、河川の自由使用は一の権利として成立する(大阪地判S8.3.7新聞3527-5)。
publicity権は肖像・氏名権の財産的側面である[50]。New York, California等では州法で保障されており[51]、日本でも判例上承認されている(東京地判H1.9.27判時1326-137光GENJI事件)。仏ではラシェル事件(1858)で承諾なくその肖像を公表することは財産権の侵害であるとした[52]。publicity権は物権同様、支配権であるので差止請求も認められる(東京地決S53.10.2判タ372-97王選手medal事件、東京地判H1.9.27判時1326-137)[53]。
人格権としての肖像・氏名権は民法の範囲だが(個人情報保護法・privacy法という独立の法分野として考えることもできる)、publicityとして捉えた肖像・氏名は財産的利益だから知財法の対象となる。publicityの価値は顧客吸引力にあり(東高判H3.9.26判時1400-3おニャン子クラブ事件)、営業標識に近いが、肖像・氏名が実際に利用されるのは事実上芸能人等に限られており、肖像・氏名は著作物によって多く利用されるから、実演家の著作隣接権にも接近する。
自分のimageをgameのcharacterに無断使用されたとして損害賠償が請求された例[54]、歌手の氏名と同名の商品に対し所属事務所が販売差止の仮処分を申し立てた例がある[55]。韓国にはpublicity権の譲渡可能性を認めた判決がある[56]。
publicity権を、人格的利益の保護が縮減される代わりに認められた有名人特有の権利とする見解がある(東京地判S51.6.29判時817-23(判タ339-136)レスター事件(五十嵐清・判時835-148、松本昌悦・中京法学12-4-39))。そして詩人は作品を創作することで名声や収入を得ており、氏名・肖像の持つ顧客吸引力そのものをcontrolすることによって経済的利益を得ることを目的に活動するものではないとして詩人のpublicity権を否定した例がある(横浜地判H4.6.4判時1434-116晩翠事件)。しかし無名の一般人も肖像・氏名を持ちその経済的価値の多寡はあるにしてもpublicity権を有する[57]。そもそも有名人のprivacy権が後退するという前提自体が問題である。
有名人は文字通り多数の関心事だが[58]、多数人が有名人のprivacyを知りたがっていることは何らprivacyを制限する理由にならない[59]。多くの人が知りたがっていることを理由としてprivacyの侵害が許されるならば、多くの人が殺したいと思う人の生命権の侵害も許されることになる。芸能人やsport選手のlife style・思想信条等が人々(特にfan)に与える影響は極めて大きいから、私生活の内奥部分とされる家族・交友関係、思想信条に関する事実の摘示についても公共性が承認される場合が存するとする見解があるが[60]、有名人は何らの権力・権限を有しているのではなく、その人格・識見によって国民生活が影響を受けるという立場にもない[61]。人々が有名人に対して寄せる人気・関心・好奇心は有名人が公的存在であることを承認するための要因にならず(東京地判H5.9.22判タ843-234来春離婚事件、東京地判H5.3.29判タこれだけの嘘事件、東高判S47.7.17マスコミ関係事件裁判例集1-30離婚事件)、その地位を社会全体の奉仕者としての責務を負う公務員と同視することはできない(東京地判S55.7.7マスコミ関係事件裁判例集3-27 star交歓図事件)。但し宗教法人の主宰者は魂の救済という崇高な使命感の下に国民の精神生活・文化に影響を与えつづけようとする特別な社会公共的立場にあるから、広く社会から全人格にわたり厳しい批判・報道にさらされることを当然に感受しなければならない立場にあるとする見解もある(東京地判H8.12.20判時1619-104 Friday事件)。
有名人は氏名や肖像が広く知られていることを望んでおり、その何人かは私生活を発表してその人気を維持向上しているが、「利益と雖も強制できない」し、全ての有名人に対してそのように決めつけることはできない(東高判S44.12.25判時582-70婚前同棲事件)。TVや映画への出演を公衆の前に自らをさらすことの同意とする見解があるが[62]、それは自分が望むような形で知られることを望んでいるに過ぎず、そうでないような形での氏名や肖像の利用は人格権・publicity権の侵害である。仮に社会通念から見れば人格を侵害しないような利用形態であっても、個人の自己決定権を尊重すれば本人の意思が全てである。
物についてもpublicity権は問題になり得る。最判S59.1.20民集38-1-1顔真卿事件は有体物の外観利用に関する所有者の権能を認めることに消極的だが、他人の所有物をその許諾なく写真撮影し、それを複製して頒布することは所有者の収益権能の侵害にあたる(神戸地伊丹支判H3.11.28判時1412-136 cruiser事件)[63]。著名な競走馬は関心や好感等、特別な感情を人々に抱かせ、馬主は関連商品から生じる経済的利益・価値の独占権(publicity権)を有する。これは無体財産だから有体物の所有権には含まれないが所有権に付随する性質をもつ[64]。フランス破棄院1999.3.10判決も写真という形態で財産を利用することは所有者の使用収益権を侵害するとした[65]。
著名歌手Elvis Presleyの米法下の相続者Elvis Presley Enterprise (EPE)による「Elvis」「Elvis Presley」の英国商標登録出願に対し、EPEがElvis Presleyのimageをもっているわけではなく、消費者はElvis商品をstarのimageを帯びているから買おうとするのであって特定の出所のものだからではないとして、「Elvis」「Elvis Presley」の登録性を否定した[66]。
characterとは劇や小説、漫画等に登場する架空・実在の人物・動物・役柄で[67]、「一貫した恒久的な性格を確保するに至ったもの」を言う(東京地判S51.5.26無体8-1-219(判時815-27)サザエさん事件)。
character自体の著作物性は否定されるが(最判H9.7.17民集51-6-2714)、characterは著作物の変形や複製とされる限り著作権法で保護される(東京地判S52.11.14無体9-2-717 Rider man事件)。ideaには著作権は及ばないためcharacterの展開が乏しければ乏しいほど著作権により保護されにくくなる(Nichols v.
Universal Pictures Co. (2nd Cir. 1930, 45 F.2d 119))。視覚的に表現されたcharacterは概念的conceptual・物理的physicalな属性を有しており、著作物性を肯定しやすい(Walt Disney Productions v. Air Pirates (9th Cir. 1954, 216 F.2d
945))。
他方、言語によってのみ表現されるcharacterはidea以上に実体化していないとして保護が否定されがちである(Warner Bros. Pictures v. Columbia Broadcasting System (9th Cir. 1954, 216 F.2d 945))。但し漫画は絵のみならず、story展開、人物の台詞や心理描写、コマの構成等の諸要素が不可分一体となった一つの著作物だから、漫画の原作者に原著作物の著作者として不可分一体の著作物の一要素たる絵に対して著作権を認めた例もある(東京地判H11.2.25判時1673-66キャンディキャンディ事件)[68]。又、慣行上は作家のcharacterに対する立場は尊重されており[69]、文学的character保護のれ論かも図られている[70]。
characterの商品への使用は、消費者の購買意欲を刺激し、製品差別化の有力な手段となっている。characterを商品に利用する権利が商品化権で、主に著作権の一支分権として機能しているが[71]、characterは商標法、意匠法、著作権法、不正競争防止法の狭間にあり[72]、それだけにとどまらない。日本は世界有数のcharacter license市場になっている[73]。キャラクター事業部という部署を設けている肌着メーカーもある(アイリン)。
「小さなcoin」はcatalogue、契約書式、住所録、使用説明書、料金表、競技規則、pamphlet等、言語の著作物の下限にあるものを言う[74]。これらは素材の収集・選択・配列・分類等に著作者の精神的労力が加わり独創的思索が存在すれば、著作権が成立する(大判S12.11.20新聞4204-3訟廷日誌事件、東京地判S 62.7.10著作権に関する判例速報24家庭教師協会入会案内事件、東京地判H4.10.30判時1460-132 taxi tariff事件)。手紙は不特定多数の読者を想定した文芸作品とは異なるし事務的・定型的な文面もあるが、実用性があっても表現に創作性があれば著作物性は肯定される[75]。米国でもbest sellerのlistの著作物性が争われた例があるが、和解に終わった[76]。Denmark Law No.158 of 1961 on Copyright in Literary and Artistic Works § 49はcatalogue、表、興行用program等多数の情報が編集された創作物は公表から10年経過するまでは無許諾複製を禁止する。
米国著作権法201(c)は集合著作物の著作権者にその集合著作物の改訂版の部分として個々の著作物を複製・頒布する特権の取得を推定するが、これには電子的databaseで再出版する権利は含まれない[77]。
databaseはa collection of independent works, data or other materials arranged in a systematic or methodical way and individually accessible by electronic or other means (Directive 96/9/EC of the European Parliament and of the Council of 11 March 1996 on the Legal Protection of Databases, (1996) O.J. L77/20 §3(1))であり本来digital情報に限定されないが[78]、日本著作権法2(1)10-3はdatabaseを電子計算機を用いて検索できるように体系的に構成した情報の集合物とする。databaseの過剰な保護は情報の円滑な流通を阻害し、科学の発展に支障を及ぼす虞もあるとする見解もあるが、科学communityはdatabaseの利用者であると共にその有力な制作者であり、保護を厚くすることは制作意欲を増し、科学の発展に寄与する[79]。databaseの保護手段には著作権、著作隣接権[80]、sui genreris regime、営業秘密、不競法、情報保護法、privacy、契約法、暗号化・電子透かし・電子署名がある[81]。
databaseは、その情報の選択又は体系的な構成によって創作性をもつものは著作物として保護されるが(著作12-2)、情報を網羅的に集積して時系列等に従って機械的に構成するdatabaseは創作性を欠くとされる。CanadaにはItaly系のみを対象とした電話帳は作成にskillと判断を必要とする選択であり創作性が認められるとした判決がある[82]。
多くの情報を広く没個性的に収集・蓄積し、一般的な汎用性のある分類体系に従って整理されたdatabaseは利用価値が高いが、没個性・汎用性を追求すればするほど著作物として保護されるための要件たる創作性から遠ざかってしまう[83]。経済界において保護が求められているdatabaseで創作性を充足するものは殆どないとする見解もある[84]。
著作権法が保護すべきは知的営為であって肉体労働ではないから、著作権法は額に汗してsweat of the brow勤勉に情報収集した者を保護すべきではないが(Feist Publications, Inc. v. Rural Telephone Service Co., 111 S. Ct. 1282 (1991).)、何をもって知的営為とするかは各人の主観によって異なり、安易に額に汗した労働に過ぎないと決めつけるべきではない。製作の過程がどのようなものであれ、出来上がったものに知的文化的意味があれば知的営為の成果とすべきである。
著作権で保護されるdatabaseでもdataが抽出され、配列を変えられたものには著作権は及ばないとする見解があるが[85]、編集著作物の「配列」とdatabaseの「体系的な構成」は異なり、databaseの保護に関してdataの配列を考慮する必要はない[86]。userがkeywordを組み合わせてdata群を取得しても、そのdata群はuserによるkeywordの組み合わせの結果であり、database製作者の創作性に基づくものではないため、database製作者の著作権を侵害しないとする見解もある[87]。しかしいかなるkeyword選定によりいかなるdataが検索されるかは全て検索programに設定されているから、dataの検索がuserの創作にかかるとは言えない[88]。
通説によると著作権法だけではdatabaseの保護が不十分になるためEUでは労力・費用・時間をかけてdatabaseを作成した者を保護するsui genreris rightが定められた[89]。sui genrerisはLatin語でof its own kind or classの意である[90]。これはdatabaseの実質的な部分について、抽出extraction、再利用re-utilizationを差止める権利である(EU Directive 7(1))。抽出は他の媒体another mediumへの恒常的・一時的移転、再利用はdatabaseの内容の全部又は実質的部分のあらゆる態様での利用を指す[91]。sui genreris right非電子的データベースにも及ぶ(BGH, Urt. v. 6. Mai 1999, AfP, 4-99, S.345 ff.)[92]。
EU Directiveは1998.1.1までに実施が義務付けられており、英国ではThe Copyright and Rights in Database Regulations 1997 (S.I.1997
No.3032)が制定・発効されたが[93]、全加盟国が期限までに実施したわけではない[94]。米国でもsui genreris rightを認める立法H.R.2652, The Collections of Information
Antipiracy Actが公聴会にかけられた(1998.2.12)[95]。米国では不正流用防止misappropriationのapproachを採る法案も審議されている[96]。WIPO条約案CRNR/DC/6, August, 30, 1996でもsui genreris regimeが検討されている[97]。日本にも特別の新規立法によるべきとの見解もあるが[98]、sui genreris rightのような新しい強力な権利を認めることは法律関係を紛糾させかねない[99]。
著作物の題号やcharacterの名称は、独立した著作物ではないが、著名なものはそれだけで顧客吸引力を有するため、その保護が問題となる。題号や名称はそれだけでは創作的表現とは言えず、著作物としては保護されないとするのが通説・判例である(東高判H4.5.14判時1431-62、大阪高判S60.9.26無体17-3-411 Popeye事件)。著作権の本質は意味内容にあるから、全く異なった作品に題号だけを借用しても著作権侵害とすべきではないからとする[100]。尤も題号も著作物の一部であり、その無断改変は同一性保持権の侵害になる(東京地判S10.12.7新聞3947-17誰が世界大戦を製造したか事件、東京地判S51.11.5著判U1-358 animation school事件)。題号や名称そのものを保護する権利として、準著作権Quasi-Copyrightを主張する見解や[101]、著作物そのものとして保護する法制(仏著作権法5条)もある。しかし著作物に要求される創作性は独自に創作したものであればよいというものだから、題号でも普通名詞をそのままtitleとしたようなものでなく作者が独自に作ったものならば創作性があり、著作物の一部とすべきである。尤も題号だけの利用の場合は引用や時事の報道によって著作権侵害が免責される場合が少なくないと思われる。
書籍・record等に付される題号はその性質上、出所表示・自他商品識別機能をもたないとする見解もあるが(東京地判S63.9.16判時1292-242 POS事件)、題号が書籍を表示し他の商品と区別するために付されていることは明らかで、周知・著名な題号は商品等表示(不競2(1))となりうる(東京地判H11.2.19判時1688-163スイングジャーナル事件)[102]。題号や名称は商標登録しうるが、現在の商品指定区分に無体物は存在せず、FD等の記憶媒体を指定商品とした商標権は無体物(game software、楽曲)の標章・題号・名称には及ばないため、それらは作品自体の商標権として認められたものではない(千葉地判H6.3.25知裁26-1-301三国志事件、東京地判H7.2.22判時1526-141 Under the Sun事件)。
typefaceは印刷用の活字等の文字及び文字setであって、一組のdesignとして、印刷技術によって文を組み立てる手段として意図されたものをいう(typefaceの保護及びその国際寄託に関するVienna協定(1973)§2(i))[103]。 typefaceは実用される文字のdesignであるから、応用美術の一種である。これに対してそれは物品と一体化して存在するものではないため、応用美術と区別する見解もあるが、著作物はそれが化体embodyしている書物やcanvasとは別個のものであり、文字通り無体物なのだから[104]、著作物性の判断を物との可分・不可分で変えるのは妥当ではない。
観賞用の「書」が著作物になることは問題ない(東京地判H1.11.10無体21-3-845、東京地判S60.10.30無体17-3-520)。東京地判S54.3.9無体11-1-114(判時934-74)ヤギ・ボールド事件(紋谷暢男・ジュリ763-146)は美術工芸品ではないとして著作権法による保護を否定したが、最高裁で氏名表示権を認めた和解が成立した[105]。大阪地判H1.3.8無体集21-1-93写植文字盤用書体事件(渋谷達紀・判時1324-213)は、盗用の場合、不法行為による損害賠償は認められうるとしたが、字体の著作権は否定した。
東京地判S55.3.10無体12-1-47タイポス事件、東高判S57.4.27無体集14-1-351同事件2審(渋谷達紀・マスコミ判例百選2版86事件)は、字体は無体物なので不正競争防止法の「商品」ではなく、同法による保護を否定したが、東高決H5.12.24判時1505-136リュウミンL-KL事件は、floppy diskで販売されるfontは無体物ではあるものの、不競法上の商品とした。不競法の商品表示というためには書体が周知・著名性を持たなければならない[106]。又、fontを不競法2(1)3号の商品形態にも含めるべきである[107]。
経済社会では既に知的財産として扱われており[108]、例えばCanon color bubble jet printer BJC-35vIIの説明書には「平成書体は(財)日本規格協会、文字フォント開発・普及センターの知的財産であるので、これを変形加工して1組の書体またはフォントとして製作・使用・販売するなどの行為は禁止されています」とある。
印刷書体は、書家の書と異なり、文字の実用的記号としての本来的性格を離れて、美術鑑賞の対象として絵画や彫刻と同視しうる美的創造物ではないが(東高判S58.4.26無体15-1-340、判時1074-25ヤギ・ボールド事件控訴審(飯島久雄・著作権判例百選45頁))、実用性と著作物性は無関係である。尚、文字は情報伝達の道具であり、文字の形一般に対して独占を認めることは、言語の著作物の利用に対する著しい制約となるとする見解もあるが[109]、真に創作性のあるものならばそれは従来の社会に存在しなかったものであり、それを創作者が独占しても人民から何かを奪うことにはならない。
書体は万人に感得されることを予定し、文字としての基本的形態を保持しなければならないので、個性の発揮する余地が少なく、書体に創作性があることはまずないとする見解もある[110]。確かに明朝体等の昔からある活字体をcomputer用にdigital化しただけのFontには著作物性は認められないが、これは写真をscannerで取り込んでjpeg画像にしたからといって新たな著作物の創作にならないのと同じである。著作物の創作性は独自に創作したものであることをいい、一般人にはtypefaceの見分けはつかないかもしれないが、専門家には違いを見分けることができ、独自に同一物が創作される可能性は高いにしても、typefaceにも個性を発揮する余地はある。書体に著作権を認めるとしても、書風や書体designの法則は著作権の対象にならないから、typeface中の一文字毎に著作権が成立するとする見解もある[111]。しかしtypefaceは一組の文字setであり侵害者もsetで侵害するのが普通だから、その場合はsetとして著作物性が判断される。
摸倣されやすいdigital化されたfontは、programの著作物として保護されうる[112]。刑事でもfont softwareのcopy品のMOの販売をprogramの無断複製にあたるとして著作権法違反で検挙した事例がある[113]。美術の表現とprogramのそれとは異なるので、programの著作物としての保護だけでは不十分だが、最も安易に行われるdigital copyを防ぐことはできる。
従来typefaceは美術の著作物性が問題となっていたが、文字が燃えたり回転したり伸縮したりするanimation文書作成softwareも登場しており(ダイナミック・タイポライター(潟CンクリメントP 1999)特願H10-127233号)、将来は映画の著作物性も問題になるかもしれない。animation文字は映画一般のimageからはかけ離れるが、連続した映像が固定されている著作物であれば映画の著作物であり(著作権法2(3))、著作権法上は動画=映画である。animation文字の創作性は美術の場合とほぼ同じことが言えよう。編集等を経て完成しない限り映画の著作物にはあたらないとする見解があるが(東高判H5.9.9判時1477-27)[114]、著作物は客観的に表現されていればよく、完成の如何は問われない[115]。映画の著作物は劇場用映画の特徴を備えていなければならないとする見解もあるが(東京地判H11.5.27判時1679-1スターオーシャン事件)[116]、multimedia化の進展する現代社会において映像自体のもつ社会的経済的価値に無配慮な見解である[117]。
版面(発行された版の組版面the typographical arrangement of published editionは、その製作に知的労力を要する知的財産であり、その権利は認められるべきである。尤も版面は主として著作物を用いて製作されるものであり、それは独自の表現というよりも著作物の伝達を媒介するものである。従って出版物の版面の利用に関する権利=版面権は著作隣接権に位置づけられる(独著作70。英著作権法1(2)(d)・17(5) (1988)は著作権と位置づける)。版面権の対象を出版物中の言語の部分に限定する見解がある[118]。挿絵や図はそれ自身著作物として保護を受けるから、重ねて版面権を認めると権利関係が錯綜するだけとする。しかし挿絵や図の創作と、それらの出版は別個の知的活動だから、複数の権利として評価すべきである。
版面権は出版活動を保護するものだが、書物の装丁はbook designという創作的活動であり、応用美術として著作権によって保護すべきである。出版物のvisual化が進み、装丁が本の売れ行きを左右するとまでいわれているが、装丁は大半の出版社が買取制にしており、増刷や改訂による利益はbook designerには還元されておらず、日本図書設計家協会は印税制を主張している[119]。東京地決S54.3.3判タ378-85漱石復刻本事件では装丁の美術著作物性が問題となったが、決定は装丁中の絵画を美術の著作物とするにとどまった。
現在、商業目的でfolkloreをはじめとする文化遺産が広い地域で不正に使用されているにもかかわらず、国際的な法的保護が行われていないため野放しになっている。先進国と発展途上国ではfolkloreの保護について認識に差があり、途上国が積極的に取り組んでいるのに比べて先進国は消極的である[120]。ギニア刑法361条は工芸品の仮面・立像・その類似物の不正輸出に対し10年以下の拘禁乃至全財産の没収刑を科す[121]。
伝統知識や貴重な資源を利用して発明がなされた場合に、最初の知識や資源を提供した人の権利も問題となる。原住民の伝統的な管理下にある資源や知識には先ず一定の財産権を認めるべきとの見解がある[122]。国際シンポジウム「文化の多様性と文化遺産」(文化庁・東京国立文化財研究所共催2000.12.18-12.21)では「先住民族や少数民族の知的所有権の保護が討議され」た(斎藤英俊「『理解、尊重、共有』の大切さ」読売新聞夕刊2000.12.28)。茶園成樹「生物多様性条約と知的財産権」日本工業所有権法学会年報22(1998)125は「根本的な問題として、発見に基づく権利も同様であるが、自然に存在する遺伝資源に権利を認めることは、バイオテクノロジーの発展を阻害する可能性があるから、詳細な検討が必要となろう」とする。
[1] ネーエル, F. L.・レントゲン(天然社1942)389、糸川英夫・着眼力・発想力・想像力を伸ばす! 世界を変えた100の発明・発見(PHP研究所1991)。スタイン=白井尚之訳・図説大発明の歴史(小学館1980)91
[2] Schelting, A.=石坂巌訳・ウェーバー社会科学の方法論(れんが書房新社1977)20
[3] 堀田一善「マーケティング学説史研究の課題と方法1」三田商学研究40-6-108
[4] 小出泰士「ベルグソン哲学における自我の構造」哲学102(慶大1997)103
[5] 渡辺真砂世「宇宙基地計画における特許権保護制度」法学政治学論究33(1997)450。McKenzie, L.M., Scientific Property, Science, 118 (1953) 767. cf.飯塚半衛・無体財産法論(厳松堂1940)402。Hamson, C/. J., Patent Rights for Scientific Discoveries (Bobbs-Merrill, 1930).
[6] 吉藤幸朔・特許法概説12版(有斐閣1997)63
[7] 吉田茂「発明の本質」原増司退官 工業所有権の基本的課題上(有斐閣1972)83
[8] 日経新聞1996.2.6。cf.那野比古・先端特許大戦争−数式でも特許になる時代(NTT出版1993)。
[9] 大塚隆一「ネット巡る特許で火花」読売新聞夕刊1999.12.17
[10] 服部敏夫・特許法要説(技報堂1968)61
[11] 川口博也・特許法の構造と課題(三嶺書房1983)40
[12] 三井誠「遺伝子特許めぐり競争激化」読売新聞夕刊2000.2.7
[13] 「「限界」みえた?遺伝子組換作物」日経エコロジー(1999.9)74
[14] 針原陽子「遺伝子特許戦争」読売新聞1999.11.17、「ヒト遺伝子6000個特許出願」読売新聞1999.9.29
[15] 「遺伝子1万個仮特許申請」読売新聞夕刊2000.2.16
[16] 平山定夫「生命の特許戦争」読売新聞夕刊2000.1.17
[17] 倉西雅子「欧州連合の形成と市場の自由化」法学政治学論究43(1999)116
[18] 榊博文「認知の陰陽論序説3」哲学102(慶大1997)135
[19] 渋谷達紀・著作権判例百選2版(1994)7
[20] 射場俊郎「古語と現代語の語呂合わせ『似ることはある』と著作権侵害認めず」コピライト463(1999)38
[21] 土井輝生「ニュース報道の法的保護」新聞研究(1989.11)17
[22] 野村義男・著作物論百考(著作権資料協会1969)29
[23] 新聞編集関係法制研究会・法と新聞(日本新聞協会1972)320、中島徹「個々の新聞記事の著作権侵害を認定した事例」判評430(1994)41
[24] 黒川利明・ソフトウェアの話(岩波1992)162
[25] 松倉秀実「GUIの知的財産保護について」秀英レポート137号(1996)。cf.佐藤恵太「コンピュータシステム上のアイコン及びディスプレイ画面の意匠登録適格に関する覚書1」比較法雑誌27-4(1994)65、知的財産研究所勉強会「インターフェイスの保護」知財研フォーラム13巻(1993)
[26] 山本喜一・情報処理入門(J.B.企画1996)155
[27] 中沢雄二「小中高等学校へのレンタルサーバサービス開始」あちゃら(1999.1)102
[28] 日本情報処理開発協会編・情報化白書1998(コンピュータ・エージ社)314
[29] WWW閲覧ソフト。1993年にNational Center for Supercomputing Applications, NCSAに在籍していたIllinois大学生Mark Andreessenが、マウスでクリックするだけでtext、画像、音声を統合して扱えるソフトMosaicを開発したことを契機にbrowserは急速に普及する(NTT Data, We Mean Business. (1999) 25)。尚、後にIllinois大学とMark Andreessen、及び彼が副社長となったMosaic Communications社との間にMosaicの著作権について紛争が生じた。
[30] ニフティ・Nifty serveコンテンツインデックス(1998)2、あちゃら(1999.1)141
[31] 棚橋元「コンピュータ・ネットワークにおける法律問題と現状での対応策6」NBL 624(1997)39
[32] 佐藤恵太「知的財産法」法時71-13(1999)141
[33] Dueker, K.S., Trademark Law Lost in Cyberspace, 9 Harv. Journal of Law and Technology 483, 500 (1996).
[34] 菊池武「インターネットのドメインネーム登録紛争についての最近の内外の動向」工業所有権仲裁センター第2回仲裁実務研究会(弁護士会館2000.2.8)
[35] 岡村志嘉子「インターネットドメイン登録」ジュリ1172(2000)76
[36] 我妻栄・新訂物権法(岩波書店1983)209
[37] 四宮・民法総則4版補正版86
[38] 権利能力なき社団について、鍛冶良堅「いわゆる権利能力なき社団(非法人社団)について」法学論叢32巻5号74−5頁、四宮・民法総則4版補正版86、星野英一「いわゆる権利能力なき社団について」民法論集1巻307、森泉章・団体法の諸問題(一粒社)91
[39] cf.民事訴訟法改正研究会「民訴改正『要綱試案』の検討1~3」判タ870・876・877(1995)
[40] 内田貴・民法I総則物権総論(東大出版会1994)343。水本浩他編・物権法(青林書院1985)117
[41] 紋谷・特許法50講4版194(紋谷)、同・無体財産権法概論7版59
[42] 入会権につき、田中=新田・民法講義ノート2物権194(田中)。権利能力なき社団財産の帰属形態につき、最判S32.11.14民集11-12-1943品川白煉瓦未登記労働組合事件
[43] 著作権につき、小泉直樹・著作権判例百選2版119
[44] 原田文夫「Eメールのお知らせ」コピライト463(1999)34
[45] Callman, The Law of Unfair Competition and Trade-Marks, 3ed., 5vols., 1224 (1967).
[46] 井上一平・新商標学(日本経済新聞社1958)312
[47] 小野昌延・商標法概説(有斐閣1989)66
[48] 網野誠・商標新版再増補(有斐閣1992)125
[49] 石川明=君嶋祐子「商標法3条の解釈といわゆる普通名称に関連する商標不登録事由」判評426(1994)59
[50] これに批判的な見解として、斉藤鳩彦「パブリシティ権の背景と問題上下」NBL427・428(1989)
[51] 林田学・マルチメディアと法律がわかる本(PHP研究所1996)80
[52] 大石泰彦「フランスにおける私生活の保護」青山法学論集32-2(1990)61
[53] 大家重夫・特許研究10(1990)9
[54] 「『ユンゲラー』は私だ」読売新聞1999.12.30、「ユリ・ゲラーさん『ポケモン』提訴へ」報知新聞1999.12.30
[55] 「『ミーシャ』使わないで」朝日新聞2000.3.16、「『ミーシャ』で仮処分申し立て」読売新聞2000.3.16
[56] 原田文夫「パブリシティー権の譲渡可能性」コピライト462(1999)37
[57] 阿部浩二・著作権判例百選2版187
[58] 清水英夫・言論法研究2(学陽書房1987)200
[59] 五十嵐清=田宮裕・名誉とプライバシー(有斐閣1968)138
[60] 大石泰彦「芸能人に関するゴシップ(噂話)記事の名誉毀損性」判評482(1999)24
[61] 清水英夫・マスコミと人権(三省堂1987)155(弘中惇一郎)
[62] 山川洋一郎=山田卓生・有名人とプライバシー(有斐閣1987)115(山田)
[63] 辻正美「所有権と著作権」斉藤博=牧野利秋・裁判実務大系27知的財産関係訴訟法(青林書院1997)390
[64] 射場俊郎「有名な競走馬の名前にも『パブリシティ権』」コピライト467(2000)41、「馬の名 無断使用ダメ」読売新聞2000.1.20
[65] 駒田泰土「有体物の外観利用と所有権」コピライト466(2000)34
[66] 原田文夫「『プレスリー』『ダイアナ』」コピライト464(1999)37
[67] 網野誠「漫画のキャラクター」著作権判例百選2版(1994)42
[68] 射場俊郎「キャンディ・キャンディの原作者関連商品の販売差止仮処分申請」コピライト459(1999)98
[69] 佐野文一郎=鈴木敏夫・改訂新著作権問答(出版開発社1979)96(佐野)
[70] レービンダー=神谷遊訳「テレビ・映画シリーズの登場人物に対する著作権保護」民商法雑誌101-4-479
[71] 岡邦俊「テレビ漫画のキャラクター」著作権判例百選2版(1994)48。cf.伊藤信男「キャラクターおよび商品化権に関する若干の疑問」工業所有権法研究14-3、佐々木正峰「キャラクターの商品化権」発明70-10
[72] 工業所有権研究グループ編・知っておきたい特許法8訂版(大蔵省印刷局1997)207
[73] 河野栓「ライセンス業界1989~1990 (2)」マーチャンダイジングレポート353(1990)70
[74] 染野義信・著作権判例百選2版74
[75] 内田法子「特定個人に宛てた作家の手紙が著作物であると認められた事例」コピライト465(2000)64
[76] 原田文夫「ベストセラーのリストに関する紛争」コピライト464(1999)37
[77] 原田文夫「集合著作物の電子媒体による再出版」コピライト464(1999)37
[78] 白石忠志「データペースの保護と競争政策上」公正取引562(1997)45
[79] 文化庁国際著作権課「データベースの保護と放送事業者の権利の保護に関するアジア・太平洋地域ラウンド・テーブル」コピライト461(1999)78(モーガン)
[80] 松田政行「マルチメディア著作権」法とコンピュータ10(1992)63、佐藤英雄「データベース著作権の新思想」新聞研究537(1996)72
[81] Nycum, S. H., Protection of Electronic Databases, Computer Lawyer Vol.14 No.8, 12 (1997).
[82] 原田文夫「電話帳の著作権」コピライト463(1999)36
[83] 金子博人「高度情報化社会におけるデータベースの保護上」NBL343 (1986)6、カージャラ「日本法におけるデータベースの保護」法律時報59-2(1987)55
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[88] 三宅保次郎「データベースの法的保護」第2回著作権・著作隣接権論文集(著作権情報センター1999)129
[89] 通産省機械情報産業局監修のデータベース白書1998(データベース振興センター)260。cf.名和小太郎・最新データベース事情2版(日本能率協会1985)、大家重夫「判例とデータベースについて」発明88-6 (1988)、紋谷暢男=板東久美子=作花文雄・プログラム著作権とは何か−データベースの著作権(有斐閣1988)
[90] Black’s Law Dictionary 6th ed. (West 1990) 1434.
[91] Cornish, W.R., 1996 European Community Directive on Database Protection, 21 Columbia-VLA Journal of Law & the Arts 9 (1996).
[92] 駒田泰土「電話帳の保護とsui genreris right」コピライト467(2000)32
[93] Chalton, S., The Copyright and Rights in Database Regulations 1997, European Intellectual Property Review (1998.5) 178.
[94] 原田文夫「データベース・ディレクティブの実施問題」コピライト465(2000)65
[95] The Honorable Howard Coble, The Spring 1998 Horace S. Manges Lecture --- The 105th Congress, 22 Columbia-VLA Journal of Law & the Arts 342 (1998)
[96] 遠藤健太郎「第3回WIPO著作権常設委員会の概要について」コピライト465(2000)33
[97] 白石忠志「データペースの保護と競争政策下」公正取引563(1997)64
[98] 椙山敬士「データベースの法的保護」半田正夫還暦 民法と著作権法の諸問題(法学書院1993)654
[99] Reichman, J.H. & Samuelson, P., Intellectual Property Rights in Data?, 50 Vanderbilt L. Rev. 55 (1997).
[100] 勝本正晃・現代文化と著作権327
[101] 牛木理一・著作権研究3-47
[102] 二瓶和紀「日本映画製作者連盟の歩みと3つの出来事」コピライト463(1999)31、菊地武「書籍の題号の保護」パテ50-5(1997)33
[103] cf.フランソン=牛木理一訳「タイプフェイスの保護と国際寄託のためのウィーン協定」コピライト191 (1977)、大家重夫「文字書体保護のための国際協定の成立と今後の課題1~4」工業所有権研究40~44(1974)
[104] 小宮山宏之「著作物について」法学研究70-1(1997)193
[105] 大家重夫「印刷用文字書体の保護と問題点」特管37-12(1987)1441
[106] 大家重夫「タイプフェイスのデータベース化について」コピライト460(1999)52
[107] 田村善之・不正競争法概説(有斐閣1994)213
[108] 中山信弘・工業所有権法上21
[109] 玉井克也「文字の形と著作権」ジュリ945-77
[110] 佐藤恵太・著作権判例百選2版35
[111] 高石義一・著作権判例百選2版33
[112] 富田徹男「技術・文化・知的所有権2フォントの保護」特許ニュース1995.9.19
[113] 山川健「フォントのコピーをパソ通で販売した男を書類送検」http://www.mainichi.co.jp/hensyuu/jiken/gazo/0917-3.html (1997)
[114] 馬場巌「『青い海のまち みさわ』未使用映画フィルムの著作権帰属事件」コピライト434-42、吉田大輔「映画の著作物概念に関する一考察 三沢市市勢映画事件最高裁判決を契機として」紋谷暢男還暦・知的財産権法の現代的課題(発明協会1998)741
[115] 半田・著作権法概説8版78
[116] 射場俊郎「ゲームソフトは映画の著作物に該当せず」コピライト460(1999)74、「ゲームソフト中古品販売は適法」読売新聞1999.5.28
[117] 辻田芳幸「ビデオゲームの影像が『映画の著作物』に該当しないとされた事例」コピライト460(1999)69
[118] Lester, D, & Mitchell, P., UK Copyright Law (1989) 17.大瀬戸豪志・著作権判例百選2版197
[119] 「『本の装丁を印税制に』デザイナーらがシンポ 不満多い買い取り制」朝日新聞1989.6.11
[120] 清水智子「『アジア・太平洋フォークロアの表現の保護に関する協議会』報告書」コピライト459(1999)36
[121] 青木隆訳「サイガ号(第二号)事件本案判決」法学研究72-10(1999)103
[122] 丸山亮「伝統知識の保護」発明97-2(2000)62